瀬戸内海国立公園の一部にも含まれる御崎の風致地区で、大規模な太陽光発電所の建設計画が進んでいることがこのほど明らかになった。
　事業者は建設に必要な赤穂市の許可をすでに取得。甲子園球場よりも広い計画面積に地元からは自然環境と災害への影響を懸念する声が上がっている。
　市に提出された許可申請書と施工業者が作った工事説明資料によると、計画地は御崎字寺山の原野、畑、雑種地など計１２５筆で南北約２９０メートル、東西約４８０メートルのいびつな形。すべてが瀬戸内海国立公園の「普通地域」と市条例に基づく第２種風致地区に含まれる。敷地面積４万０６６４平方メートルの７割近い面積で木竹を伐採し、来年２月末までに１万２２４８平方メートル分の発電パネルを設置する計画だという。工事説明資料には事業主として「株式会社サンエース」（枚方市）と記載されているが、許可申請手続きは「株式会社京電」（京都市西京区）が行った。
　地元自治会連合会長の話では、７月下旬に自宅の郵便受けに工事説明資料が投函され、翌日に電話連絡があったという。会長は「木竹の伐採によって山の保水力が失われるのではないか。国立公園と風致地区にふさわしい施設とは思えない」との考えから、面会に来た施工業者に「地元としてはゼロベースで考えたい」と伝えたという。
　事業者側から市に相談があったのは今年３月ごろ。６月９日に風致地区内建築規制条例に基づく許可申請があった。市の事務執行規則では部長に決裁権限のある案件に該当するが、「庁内で協議した結果、市長に決裁を仰いだ」（同課）という。市は「基準に適合している」として７月１６日付けで許可書を交付した。市内の風致地区での太陽光発電施設の建設計画は申請、許可とも今回が初めてという。
　国立公園での太陽光発電施設の建設をめぐっては、今年６月に国が規制を強化したが、普通地区については国への届出のみで許可は不要。また、今回の計画では施設の高さは最高８・３メートルで、市条例が第１種・第２種風致地区に定める建築物の高さ制限（１０メートル以下）の許可基準内に収まっている。
　許可申請の窓口となった市都市整備課は、「顧問弁護士にも相談したが、『不許可にするのは難しい』とのことだった。地元説明会の開催、環境と景観への配慮、反射光問題などが発生した場合に責任をもって問題解決することなどを努力規程に明記した」と話した。
　工事工程表では７月２０日から伐採工事に入る予定だったが、地元住民によれば今のところ工事に着手した様子はないという。住民の一人は「地元にろくに説明もせんと計画をトントン進めて」と不信感を口にし、「法律に触れんかったらええんか。法律の前に守らなあかんモラルが業者にはないんか」と憤った。
　事業主のサンエースは赤穂民報の取材申し込みに対し、「弊社としても一度お会いをしたうえでお話をさせて頂きたいと考えておりますが、現在のところ８月は大変忙しくさせてもらっております。９月にはそちらへお伺いをすることもありますのでその時にあらためて取材を受けさせて下さい」と回答があった。
　＊　＊　＊
　◆国立公園＝自然環境の保護と快適で適正な利用を推進するため、自然公園法に基づき環境大臣が指定した地域。特別地域、特別保護地区、海域公園地区、普通地域がある。工作物を新築する場合、特別地域と特別保護地区は許可が必要だが、普通地区は届出でよい。
　◆風致地区＝良好な自然的景観を形成している区域のうち、土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域。１０ヘクタール以上は都道府県・政令市が、１０ヘクタール未満は市町村が指定する。「都市の風致」とは、「都市において水や緑などの自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観」とされている。

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掲載紙面（PDF）：
2015年8月8日・第１部(2147号) 1面 (10,310,003byte)
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