同行ルポ・被災地で広がる「格差」
2011年05月21日
9割近い家屋が流失した石巻市雄勝町水浜地区。写真の左側から高さ20メートルの津波が押し寄せた
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5月15日正午過ぎ、仙台駅に着いた我々を出迎えてくれたのは、加藤久さん(55)=東京都世田谷区=と森勝義さん(71)=仙台市泉区=。
加藤さんは宮城県で生まれ育ち、かつて日本代表主将として活躍した元サッカー選手。後進の指導、テレビ解説など多忙な仕事の合間を縫って故郷の救援に尽くしている。かき研究の世界的権威で赤穂出身の森さん=東北大名誉教授=は仙台市に本部がある「世界かき学会」の会長。津波で深刻な被害を受けた養殖業界の立て直しに東奔西走の毎日を送っている。
嘉陽田さんは阪神淡路大震災で被災した親戚を全国各地から来神したボランティアに助けられた以降、「恩義を返したい」と飲食店経営の強みを生かし、水害のあった佐用などで炊き出しを行ってきた。
この度も4月上旬と中旬の2回、食材を満載したトラックに調理師仲間を乗せて宮城入り。「温かいものを食べたのは震災後初めて」という被災者にラーメン、雑煮など計5000食を振る舞った。土地勘のない嘉陽田さんに代わって現地コーディネートを担ったのが加藤さんと森さんだ。
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今回の3人の目的は、今後の支援活動の方針と手法を見定めるための情報収集。救援に訪れた各避難所の状況変化を確認するため、加藤さんの運転する車で牡鹿半島へ向かった。
「かなり道路がよくなったですね」と加藤さん。それでも、沿岸部に近づくにつれ、カーナビの画面には冠水や土砂崩れで「通行止め」を示すマークがいくつも見える。
東北最大の流域面積を誇る北上川に沿って下流へ。あの日、壁のような津波が遡ったという。川のそばにある大川小学校は全校児童108人のうち74人が亡くなるか行方不明になった。かつての市街地は海岸から数キロ先の山すそに突き当たるまで、鉄筋造の建物がいくつか残るのみ。その2階屋上に大型バスが乗っかっている。
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言葉を失ったまま到着したのが石巻市雄勝町(おがつちょう)水浜地区。高さ20メートルの津波で9割近くの家屋が流された。「地震が来たら津波」との昔からの教えでいち早く避難したものの、住民380人のうち1人が亡くなり8人が行方不明になっている。
20数年前に閉鎖され、間もなく取り壊し予定だった平屋建ての旧保育所が避難所。集落で最も高い場所にあり、辛うじて残った。子どもを持つ世帯は代替通学先の関係で50キロ以上内陸の町へ二次避難し、現在は高齢者を中心に約60人が身を寄せ合う。市中心部へ行くには寸断箇所を避けて大きく迂回しなければならず、その距離約30キロ。電気の復旧はゴールデンウィーク明けまでかかり、水道は「3日前にやっと出た」という。
主婦の秋山勝子さん(67)が「この前も来てくれた赤穂の人でしょ?」と笑顔で駆け寄った。「保険が下りなかったのよ」と近況を口にしたときは一瞬悲しそうな表情になったが、すぐに明るく振る舞った。「みんなで『泣かないようにしよう』って約束したから。前を向いていこうねって」。
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この日は計4カ所を訪問。豊富な物資に恵まれた大規模な避難所がある一方、「みんなが被災者。ぜいたくは言えない」とぎりぎりの暮らしで辛抱して生き延びている人たちがいた。「当面の物資は行き届いている」とする行政とのギャップ。嘉陽田さんは「日が経つほど、その差が大きくなっている気がする」と嘆く。
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嘉陽田さんたちは翌日、森さんの長女で臨床心理士の佐藤葉子さん(40)と、その友人で専門学校講師の渡部芳美さん(45)に会った。2人はそれぞれ避難所に足を運び、被災者の心のケア、きめ細かい物資支援を行っている。「裁縫だけが生きがいなのに」と落ち込んでいた主婦にミシンを届けたときは一家全員が万歳して喜んでくれたという。
ここでの話し合いでも、避難所格差が課題として挙げられた。
渡部さんの話によると、食事や物資の行き渡り具合、生活環境は避難所ごとで大きく異なり、2カ月過ぎた今でもパンと缶詰しか配給されていないところも。人手不足、ニーズ把握の不徹底など理由はさまざまだが、「在庫がありながら被災者に届かない」という状況が現実にあるという。
5人は「今後はそうした“置き去りの避難所”へのピンポイントな支援が必要」との見解で一致。可能な範囲で連携して活動することを申し合わせた。
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視察を終えて、「必要なところへ必要なものをできるだけ早く届ける」「自分にできることを実践する」ことが求められていると改めて感じた嘉陽田さん。周囲からは「交通費をかけて赤穂から行くよりも、その分食べ物を買って送ってあげる方が効率がよいのでは」と言われたこともあるが、「単に生き延びるための“食糧”やったら活力は生まれへん。あったかいもんを腹に入れて、笑顔になってほしい」と話す。
「ライフラインが復旧したら、あとは地元の料理人が店を再開するはず。炊き出しに行けるのも次が最後のチャンスかな」と宮城から帰った翌日、さっそく次回支援に向けた準備を始めた。6月中旬の北上を目標に必要な食材や物資を集めるために走り回っている。
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掲載紙面(PDF):
2011年5月21日(1944号) 1面 (7,210,438byte)
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コメント
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投稿:Kakyo 2011年05月23日現地に行き、自分の目で見てきたこと、体験したことって、語りつくせないほどあるはずです。
間違ったことをしてなくても、なんでもかんでも知りもせず否定される世の中だから、みんな当り触りなく生活しているのでしょうね。
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投稿:市民 2011年05月22日なんでもかんでも、否定するのではなく、どのようは方法で現地に入って行けばいいかとか、物資を送るのに、受け取る側がどのような状況で、何が必要なのかを状況把握しているのが行政なので、「行政の協力」を得るとは、そういったこちなのですよ。私は、一市民ですが、実際に動いて現地に行かれた人は、みなさん素晴らしいと思います。行けない、行かない私は、黙っていようと思います。
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投稿:勘違いですよ 2011年05月22日服送ってあげよ〜
と思っても、はいどうぞってわけにはいかない。
僕も問い合わしてにみたけど、シャツならシャツ、タオルならタオル、トラック一台分用意出来るなら受けつけます。と言われました。
僕はコンビニ募金しかできません。
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投稿:同じく 2011年05月21日勝手に行って、勝手に食べ物とか配れると思います?
赤穂市が集めていた物資にも、新品の布団、衣類、タオルのみと規制があったように、色々規制があるのは当たり前。
衛生のこともあるし、許可が必要ってことですよ。
ボランティアに距離、、、人それぞれ出来る事は違うでしょうが、コンビニで募金でも十分じゃないですか?
被災地の本当の現状を知って欲しくて、この記事があるのではないですか?
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投稿:市民 2011年05月21日それを熱意というのなら・・・やっぱり関わりたくないというかボランティアに距離を取りざるを得ない。
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投稿:器量梨 2011年05月21日GW中は、みんな志のある人が自分の考えで行ってたんとちがうの?
私は、よう行かんけど。
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投稿:市民 2011年05月21日市は関係無いではボランティア活動の許可が下りず、勝手に現地に行けません。
まだまだ危険ですから。
有力者は、それだけの器量があるから、有力者なんですよね?
声が大きいからと言う理由ではないでしょ。
あらゆる角度からアプローチし、やっと現地に行く事が出来るのですよ。
ボランティアに関われたのは、熱意です。
忙しいさなか、やっいとの思いで、現地に行く許可を貰えたのです。
そんな人だから、水がたりない、と連絡がはいると
どうにかしてください。
と、頼られたりする訳ですよ。
人生頑張っている!と胸を張って言えるなら
彼を理解出来るはずです。
実行出来る人は、そんなにいません。
だから、成功をつかみ、有力者になれるのではないでしょうか?
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投稿:きぃ 2011年05月21日http://www.ako-minpo.jp/news/5071.html もそうだけど、「所用で安全安心担当に訪れた人物」に”宙ぶらりん状態”の飲料水の仲介をお願い「したりされてたり」するし。
なんだか関われる人間が限定的というか不透明感がしたりするのがボランティアってのに不信感を抱く原因だと思う。
ボランティアに関われる人・関われない人、ここにも「格差」が生じていると思うぞ!!
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投稿:唯にゃん 2011年05月21日これは自分で考え、自分で行動することやろ。
やったら市なんて関係ないんとちがうのかなぁ。
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投稿:市民 2011年05月21日赤穂市に予算を出してもらうようにお願いするとお聞きましたがお願いされましたか?
私も手弁当で少人数で行ってますが本当に大変です。
現地はとても広いですから、これからも頑張って頂けると嬉しいです。
私もがんばります。
牡蠣タネの早い復興をお祈りします。
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投稿:あんぽんちん 2011年05月21日コメントを書く