赤穂民報

関福大・加藤明先生の「応援します!かしこい子育て・教育・介護」【第11回】(6月20日)

【ザリガニを「伊勢エビ」に育てる生活科】
 生活科は、小学校1、2年の理科、社会科を廃止して平成元年から新設された教科です。
 いちばんの特徴は、教室で席に座っての学習にとどまらず、外に出て実際に自然や町の人々の暮らしにかかわりながら「なるほどそうだったのか」「やっぱり」と感動や納得、本音に基づく確かな理解を積み重ねていくことです。
 以前の私の授業の紹介です。笹舟を作りたい、石で水切りをしたい、ダムを作りたい、やってみたいことを発表しあい、楽しみを膨らませての河原遊びから活動を始めました。
 熱中して遊んでいるうちに、生き物を見つけた子どもたち。オタマジャクシ、カワエビ、カダヤシ、ザリガニ、タニシがいましたが、なかなかうまく捕まりません。捕まえ方も勉強なのです。やっと捕まえたら、今度は教室にもって帰って育てたい、育てて他の学年やクラスの子達にも見せたいと言い出しました。
 「責任をもって育てるから」と約束させて、さあ、教室に帰っての相談です。えさはどうするのか、すみかはどうすればいいのか。図鑑で調べたり、誰かに聞いたり、元いた場所のまわりを探したりと、学習はどんどん進んでいきます。やってみたいことが膨らむからです。
 ただ、ここで壁にぶつかりました。オタマジャクシからカエルに成長した後、与えたえさを食べないのです。タニシのえさも分かりません。仕方がないので、元いた場所に返すことにしました。生き物の育て方と成長の様子の観察だけでなく、生き物を育てることは易しいことではない。これを実感をもって理解させるのもねらいの一つでした。
 ただ、この後の展開が予想外でした。「先生、図鑑にザリガニのえさが『するめ』って書いてあったけれど、あれっていろんなものを与えて分かったことだよね」と、子どもたちはザリガニの好物探しを始めたのです。
 その結果、小さな科学者たちは、ザリガニがまるで伊勢エビのように立派に育つえさを見つけました。それは、なんと『ドッグフード』だったのです。すごいでしょう。なかなかやるものです。
 やってみたいこと、やらずにおれないことが膨らんでいくなかで、これまでに習得した知識や技能を活用し、時間も忘れて問題解決に取り組む。そのなかで得られる学ぶ喜びと手応えこそが、理科や社会科をはじめとしてこれからの学習を支える基盤になるのです。(関西福祉大学・学長)

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