赤穂民報

間違い電話の老人へ善意の米配達(6月27日)

 一人暮らしのお年寄りから間違い電話で米の配達を頼まれた男性。その男性が取った行動が心温まるエピソードとして話題になっている。
 先月下旬、中広の自営業Mさん(61)の携帯電話に公衆電話から着信があった。「お米を5キロお願いします」と聞き覚えのない高齢女性の声。「間違って掛けておられませんか」と質したが、女性は耳が遠いのか、「お米を5キロお願いします」と繰り返すばかり。意思疎通できないまま電話は切れた。
 4〜5日後の午後に、再び公衆電話から「お米を5キロお願いします」と電話があった。前回よりも弱々しく、しかも切迫感のある声のトーンから、いたずら電話でないと感じたMさんは、「ずっとご飯を食べていないかも知れない」と市役所に通報した。
 「担当者が戻ったら対応します」との返答を受けたものの、「もし、おばあちゃんに万一のことがあったら、最初の電話で対応しなかった自分のせいだ」と責任を背負ったMさんは、電話で聞いた地名と姓を手掛かりに女性宅を住宅地図で探し当て、自宅にあった米10キロ袋を車に積んで家を出た。
 「すぐに食べられるものも必要」とコンビニでおにぎり弁当とペットボトルの日本茶を買ってから到着。呼び鈴を押しても応答がなく焦ったが、近所の人から「おばあちゃんは寝ているみたいですよ」と聞き、持ってきた米と弁当、お茶を玄関前に置いて帰った。
 夜になって、女性から「寝とって気がつかんかった。お金を払うから取りに来てください」と電話があった。無事だったことに安堵し、「おばあちゃん、ちゃんと食べてね。お金はいいんだよ」と言って電話を切ったものの、何かしら不安を感じ、「もういっぺん見てくる」と、ちょうど妻が夕食に作っていたコーンスープを水筒に入れて、また女性宅へ向かった。
 玄関を開けると、女性は廊下に正座して待っていた。何度も感謝の言葉を口にする女性へ、自分はお米屋さんではないと伝えようと筆談を試みたが、女性は状況を飲み込めない様子。仕方なく、「お米がなくなったら、また電話してきてね」と、やさしく声を掛けて別れた。
 それから数日後。女性が普段買ったことのないコンビニ弁当の器があることにデイサービスの送迎スタッフが気付き、そこからMさんの親切がわかった。Mさんが経営する会社の電話は、女性が米を注文しようとした業者の番号と数字一つ違いで、携帯電話へ転送される設定だった。女性は自宅に電話がなく、最寄りの公衆電話まで出掛けて米を注文していたという。
 女性は80代。6年前に他界した実母を思い出したというMさんは「母には十分なことをしてやれなかったという思いがあります。おばあちゃんには間違いでもいいから、また電話を掛けてきてほしい。米なら持っていくから」と話している。

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