赤穂民報

尾上松之助の忠臣蔵 幻のフィルム発見(9月9日)

 「目玉の松ちゃん」の愛称で人気を博した日本映画草創期の大スター、尾上松之助(1875−1926)が最晩年に主演した無声映画『実録忠臣蔵』のフィルムが京都市中京区の「おもちゃ映画ミュージアム」で見つかった。
 1000本を超える作品に出演したといわれる松之助だが、同ミュージアム代表理事で大阪芸術大学教授の太田米男さん(66)=京田辺市=によると、残存が確認されているのは「断片を含めても10本程度で、今回の発見は極めて貴重」という。
 『実録忠臣蔵』(池田富保監督、196分)は1926年(大正15)に日活が製作した。「生涯に20本を超える作品で大石内蔵助役を演じた松之助にとって決定版といえる忠臣蔵映画」(太田さん)だという。牧野省三が監督した『実録忠臣蔵』(昭和3年)とは別の作品。合計約20分の断片フィルムを京都文化博物館が所蔵しているが、その他は映画関係者の間で「もはや現存しない幻のフィルム」と言われていた。
 今回見つかったのは、「パテベビー」という9・5ミリフィルム4巻に再編集された短縮版約66分。古い映画フィルムや映写機を収集展示して今年5月にオープンした同ミュージアムに6月、熊本県の男性から寄贈されたフィルム約30巻の中に含まれていた。太田さんと「尾上松之助遺品保存会」の松野吉孝代表(63)=京都市下京区=が映像を確認。京都文化博物館のフィルムにはない刃傷や討ち入りのシーンも収まっていた。
 太田さんは「山鹿流鶴翼の陣形で討ち入りを行った点などにこだわっている。数ある忠臣蔵映画の中で、こうした表現はこの作が最初」と価値を指摘する。討ち入った浪士らが3人一組で行動していることや袖口を白布でおおった黒小袖を着用している点など、史実に基づいた考証と演出がはかられていることもわかった。
 松之助の遺品や関連資料など約100点と写真類約1800点を整理保管する松野代表によると、アルバムには『実録忠臣蔵』のスチール写真も含まれるという。「もう現存しないと言われていた松之助のフィルムが見つかり、眠っていた写真の一枚一枚が動き出したような感銘を受けた」と喜びを語った。
 太田さんは「貴重な文化遺産として後世に伝え残したい」と見つかったフィルムをデジタルと世界標準の35ミリ版に複製する予定。松之助の生誕140年にあたる9月12日(土)に同ミュージアムで午後3時から一部をデジタル上映(1700円、要予約、定員30人になり次第締め切り)する。10月の京都国際映画祭(15〜18日)には全編を出品する。いずれも活動弁士付き。Tel075・803・0033。

(貴重なフィルムが見つかった尾上松之助主演『実録忠臣蔵』の一場面=おもちゃ映画ミュージアム提供)

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