赤穂民報

関福大・加藤明先生の「応援します!かしこい子育て・教育・介護」【第21回】(11月21日)

【子育てはクールな息の長い情熱で】
 小学校の先生をしていた頃、6年生を担任していなくても卒業文章を見るのが毎年の楽しみの一つでした。小学校6年間の締めくくりでもあり、どんな小学校生活を送ってきたか、何がいちばんの思い出だったのかなどなど、文章からその子の個性を垣間見ることができるからです。
 そして、もう一つの楽しみは、担任の先生の指導が卒業文集を通して分かることです。若い先生のクラスでは、担任の先生の名前がよく出てきます。それだけではなく、ベストをつくせとか、友だちを大切にとか、担任の先生の日頃のモットーが子どもの文章の随所に出てきます。これに対し、ベテランの先生のクラスの文章には、先生の名前やモットーが出てくることはほとんどありません。この違いをどうみるか。私は個性の受け止め方、伸ばし方の相違にその原因があると思います。
 若い先生は、自分のもっている価値観をストレートに子どもにぶつけていって教育をおこないがちです。つまり、ホットな情熱による教育です。その結果、先生をそのまま小さくしたような子どもが育ちます。相性が合えば快適です。
 ベテランの先生は、自分を前面に出す前に子どもがもっているものを受け入れ、それをどう伸ばしていけばいいかを考えることが多いようです。教職の長い経験からの智恵がそうさせるのだと思います。衣服に炊き込めた香の香りで教育をする「薫習(くんじゅう)」ということばがありますが、それは直接的ではない、クールな情熱による教育です。
 どちらがいいかではなく、子どもの成長には友だち関係も含め、多様な個性に出会うことが大切です。しかしながら、基本的には教育はホットではなく、息の長いクールな情熱の方がいいと思います。
 読者の皆さんは、どちらのタイプに近い接し方をしておられますか。あるときはホットにまたあるときはクールに、家庭の中で役割分担をしながらもあっていいでしょう。
 大切なことは、子どもの内面に土足で踏み込まず、今の姿をまず受けとめ、受け容れて、ひとり立ちを支えること。自分の足で立ち、自分で歩むことを応援し、見守ること。いつまでも親が横についていることはできないのですから。(関西福祉大学・学長)

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