赤穂民報
関西福祉大学リレーコラム・大切なことを学び直す(2)(1月30日)
―“ソーシャル(社会的)”という言葉に込められた意味―
社会福祉という言葉の「社会」は、英語ではソーシャルといいます。この言葉を辞書で引くと、「社会的」、「社会に関する」、「社交的」とあります。ルソーという人はこの言葉に、他者を気遣う、平等を志向するといった意味をもたせました。それ以来、ソーシャルという言葉は、友愛、気遣い、連帯、平等といった価値を含んだ言葉になりました。しかしながら、今日ではそうした意味が忘れられています。
もう一つ、忘れられている言葉があります。それは「自然」です。ここでいう自然とは、どんな家庭環境に生まれるか、どんな能力をもって生まれるか、あるいは、事故や災害に遭う、病気になる等、人間の力ではどうすることもできない出来事を生み出す力のことです。
人間はこうした自然(力)を忘れ、自然を利用可能な資源(物質)と捉え、その自然を開発・利用するようになりました。時代は徐々に、一人ひとりの人間がやりたいことをする「自由」を重んじるようになりました。そこに競争がもちこまれることで、物質的に豊かで便利な社会が実現します。しかし、そうした社会では、格差の拡大とともに拡がる貧困、人と人とのつながりの喪失、虐待や配偶者による暴力、いじめなどが社会問題となっています。
人間は「自然」の中に生まれ、自然の中で生きています。だから、自分たちの力ではどうにもならない困難を前に、他者を気遣い、自然がもたらす極端な不平等を縮小しようとしました。こうした気持ちや意志が「ソーシャル」です。この言葉には人間の叡智、あるいは“願い”のようなものが込められています。「ソーシャル」という言葉に込められたものを歴史に学びながら、社会を創っていくことが大切ではないでしょうか。(中村剛・関西福祉大学社会福祉学部教授)
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