赤穂民報

関西福祉大学リレーコラム・健康を守る(3)(5月14日)

【まず安全・安楽そして自立】
 誰かを介護をする時、介護される人の安全を守る―これはもっとも優先されなければなりません。
 もし身体の半身がマヒし、感覚もなく体を思うように自由に動かせない人の入浴を介助するといった場合、まずベッドから車いすなどへの『移動』という介助が必要になります。『移動』の介助は相手の身体の状態に合わせて、介助する側がその技術力を備えていないと転倒や転落につながる危険と隣り合わせの介助です。
 介助者は、介助される人の安全を守るために、たとえ自分の体力や腕力に自信があっても、極力、人を呼んで協力してもらったり、リフトなどの道具を準備するなど、出来る限り一人で行わないという判断を意識的にすることが大事です。急いだり焦ったり現実的にそれが難しい場合もあるかもしれません。しかしそれは、介護される人の安全を守るのと同時に、介護する側の安全を守ることにもつながります。
 介護に携わる人の腰痛経験率は非常に多く、日々繰り返し同じ負荷が身体にかかることが原因となっているからです。一方、介護される側も自分の身体をたった一人の人間に預けることは不安な上に気を遣います。正直、安楽(リラックス)な状態ではありません。やはり「安全」とともに「安楽(リラックス)」な援助を願っています。
 もう一つ大事な視点は、人の「自立」をサポートすることです。病気やけがをした人、また高齢の方に対してなど、身の回りのことを全て介護者がうまく行えば、安全・安楽は守られ、安心かもしれません。
 介護される側も全てやってもらえれば一時的に楽かもしれません。しかし、ヒトの身体の機能は使わなければどんどん衰えます。時間をかければ出来る事を人に任せていると、やがてそれも出来なくなります。日常の中で、例えば、箸は使えなくてもフォークなら自分で食べられる、衣服のボタンをとめる、靴を自分で履く、トイレの中でのズボンの上げ下ろしなど、全ては自力で出来なくても一部でも出来る事は、たとえ時間がかかっても自分でしてもらう、それを安全・安楽を見守りながらサポートする、言うのは簡単なことですが、当事者ともなればそれは案外難しく、お互いがその状況を理解して、その気力を持ち続けられるように同じ方向を向いてすすまなければなりません。
 もしそのような状況で何か困った時、悩んだとき、介護する人も介護される人もそれを一人で抱え込まないでください。そのために、医療・看護・福祉をはじめ、さまざまな専門職がいるのです。(前川泰子・看護学部准教授)

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