赤穂民報

関西福祉大学リレーコラム・やさしいことばは、やさしい心になる魔法の近道(7月2日)

 「今日の給食のカレーには、みんなが苦手なニンジンがおいしく食べられるよう魔法がかけてあります」
 これはある小学校の給食の時間の放送です。給食委員会の児童ではなく、給食調理人が直接語りかけていました。私はこの放送を聞いて、思わず微笑んでしまいました。給食調理人さんの願いのこもったニンジンが入ったカレー、きっとおいしく食べたに違いありません。
 豊岡の駅でこのような放送を聞きました。
 「今到着したのはA行きの列車です。B方面には行きませんよ、間違えて乗ったらだめですよ」
 これにも微笑んでしまいました。トライやるウィークで中学生が駅員さんの仕事を手伝わせてもらっていたのですが、列車を間違えて乗らないようにという正直な気持ちがこのようなことばになったのでしょう。
 やさしいことばは、人の気持ちをやさしく穏やかにさせます。そして優しい心を育てます。きれいなことばは、きれいな心を育てます。子どもたちにかけることばを、大切に、美しいものにするよう心がけたいものです。それがやさしくてきれいな心をもった子どもたちを育てるための方法だからです。
 4月の始めに、市内のパン屋さんに行ったときのことです。7時に店に入ったのですが、私以外にお客さんはいませんでした。そのうち、お父さんと幼稚園児くらいの女の子が手をつないで入ってきました。店に入るなり、女の子が「おはようございます」と元気に挨拶をしたのです。
 すると、店のあちこちから「おはようございます」と挨拶が返ってきました。みんなパン作りの最中なのか、店内を見回したところ姿は見えません。でも、ここにいますよ、「おはようございます」と歓迎の挨拶が返ってきたのです。それも一人じゃなく、数人の声が。
 そのとたんに店の中が、ぱあっと桜色になった気がしました。女の子もすてきなら、それに応える従業員のみなさんのすてきさになんだかうれしくなりました。それと同時にあいさつをしなかった自分が恥ずかしくなりました。
 無色だった店内の空間が、あいさつによって人と人とのかかわりが生まれ、いっぺんに色づいたのです。私はうれしくて、このことをその日の朝、早速学生達に話しました。
 ことばは魔法です、あいさつも魔法です。私たちは、この魔法を使ってまわりに彩りをもたらすことができるのです。まわりの人をやさしく、穏やかに、そして元気づけるのがことばのもつ魔法の力、これを使いこなす魔法使いになりましょう。実はそれは私たち自身の心もやさしく、穏やかに、元気にするのです。
 そして子どもたちにも、教えてやりましょう。このように、やさしいことばはやさしい心に、きれいなことばはきれいな心になる魔法の近道だよと。(加藤明学長)

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