赤穂民報
関西福祉大学リレーコラム・受容と双方向性(7月30日)
今回はケアの精神の第2回として「受容」を紹介します。
受容というのは、相手の言葉や気持ちを否定せずにそのまま受け入れることを言います。「ありのまま受け入れる」「まるごと受け止める」と表現することもできるのでしょうが、実際に行うのはなかなか難しいことです。相手の言葉や行動を自分の考えや価値観で評価して、「○○した方がいいと思うよ」などとアドバイスしてしまった経験のある方も多いのではないでしょうか。
カウンセリングの技法として「受容」することの重要性を強調したのは、カール・ロジャーズというアメリカの心理学者です。ロジャーズは、カウンセラーが来談者(クライエント)の言葉や気持ちを否定せずにそのまま受け入れることで、来談者の自己成長を促すことができると考えました。
私が教員のための研修施設でカウンセリングの講座を担当していたとき、何人かの先生方から、「児童生徒のよくない言葉や行動を指導するのが教師の仕事だと思います。受容することはできません…」と言われたことがあります。
そんなとき先生方に、「よくない言葉や行動そのものを受容しようとするのではなく、そういう言葉を口にしたり行動したりする児童生徒の気持ちや感情について想像力を働かせてみてください。受容するというのは、不安などの感情を受けとめ児童生徒が安心感をもつことができるようにすることです。そのために学校の教師には何ができるのかを考えてみてください」とお伝えしていました。
受容されることによって安心感を持てるようになると、人は他者に心を開き見通しを持てるようになります。
そして想像力を働かせることについてですが、気持ちや感情についての想像が必ずしも的中するとは限りません。大切なことは想像力を働かせる際に双方向性を意識することです。具体的には、「私はあなたの気持ちは○○○と思うのだけれど…、どうでしょうか?もし違っていたら教えてくれる?」というようなやりとりを繰り返すことで、決めつけない、ゆだねる姿勢を示します。
ケアの精神に基づいたコミュニケーションの基盤にあるのは双方向性(インタラクティブ)です。(市橋真奈美・発達教育学部講師)
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