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関西福祉大学リレーコラム・世界に対する基本的な信頼感(9月10日)

 前回に引き続いて「共感」について説明します。「共感」は近年脳科学の分野においてもミラーニューロンの発見によっても注目を集めています。私たちはドラマや映画などの悲しいシーンを観て涙を流すことがあります。実際に自分が体験していなくても、それを観ただけでミラーニューロンが活性化して、実際に自分が体験するときに活性化する細胞が同じような働きをするというのです。
 現在私たちが生きているグローバル社会では、人、モノ、情報等がまさに地球規模で行き交い、様々な価値が交錯しています。また、価値もめまぐるしく変わります。残念ながら、昔のように「これが正義だ」とか「こうしておけば間違いがない」という先輩たちのアドバイスが通じなくなってきたと言えるかもしれません。
 例えば、少し前にもてはやされていたものが今では見向きもされないということを私たちはしばしば経験します。それは芸能人や有名人のバッシング報道を見聞きするたびに感じます。
 この現象は学校で起こっている「いじめ」によく似ているように思います。子どもが「自分もいつあんなふうにいじめのターゲットになるかわからない。明日学校に行ったら友だちが口をきいてくれないんじゃないかとそれが怖い」と言うのを聞くことがあります。
 大人の一人として、こんな言葉を聞いたとき、「考え過ぎじゃないかな。そんなおかしなことは起こらないと思うよ。自信をもって学校に行ってみようよ」と声をかけたくなります。しかしながら、現にいじめやバッシングに遭っている人にとって、こんな言葉は何の救いにもなりません。昨日までニコニコして話しかけていた人たちが、今日は自分によそよそしい態度をとる……、それは不安なことだと思います。
 真っ暗な夜道を一人で歩いているときのことを想像してみてください。一人だと怖いですね。ひとりぼっちだと少しの物音におびえて怖い思いをします。そんな状況のとき、どんなふうにしてもらうと安心できますか? そっと肩を抱いてもらうのが安心できる人もいるでしょう。ぎゅっと手を握ってもらうことでホッとする人もいるかもしれません。傍らで歌を歌ってくれるのが安心できると思う人もいるかもしれません。人によって違うと思います。例えば、肩をさわられるのが苦手な人が真っ暗な夜道で急に肩をつかまれたらどうでしょう? ギャーって声をあげたくなると思いませんか? 私は学校でパニックを起こしているギャーって声をあげている子どもの中にはそんな気持ちの子どももいると思うのです。そんな時大事なのは、その子どもに合った方法で安心させてあげることだと思います。ああ、何とかこの暗い夜道を歩いて行こうと思える、そんな安心感、世界に対する安心感、基本的信頼感を持てるようになるためにも、「共感」的かかわりが大切だと考えます。(市橋真奈美・発達教育学部講師)

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