赤穂民報

関西福祉大学リレーコラム・小学校の教室から学んだこと(2)(5月13日)

〜おしゃべりの秘訣〜 
 小学校の先生をしていたとき、楽しいことがたくさんありました。その一つは子どもたちとのおしゃべりです。
 休憩時間、教室の先生の机の周りに集まって、子どもたちは、無邪気にいろいろなことを話してくれました。小さい頃のこと、休日の出来事、家族の様子などなど。時には、「お母さんがこの前の参観日の授業、面白かったよって」といううれしい情報もあれば、「学級通信が出るのが遅いって、お母さんたちが集まってしゃべってたよ」などという、ちょっとドキッとする情報もあって少し反省することも。お家の人のちょっとした楽しいエピソード(失敗談のこともあるのですが)をたくさん教えてくれる子たちもよくいました。
 その中のひとりの子のお母さんと参観日で出会ったときのこと。「先生は、リンゴの味は好きなのにかじる音が嫌いで、給食の時間に一口食べては、鳥肌立て大騒ぎしてたって子供から聞きましたよ」と私の学級でのおかしなエピソードを楽しそうに教えてくださいます。
 「……。きっと○○ちゃんはたくさん学校の話をお家してるんですね」と私は答えました。すると、はっとして「もしかして、私のことも学校で話してますか!」と青ざめたお母さん。「たくさん話してますね…」と私。二人で顔を見合わせて照れ笑いです。
 家庭の様子を学校で競うように話す子どもたちの様子からは、「先生に喜んでもらいたい」、「共感してもらいたい」という気持ちが感じられることもあるので、そのまま受け取ることなく「話半分」で聞く場合もしばしば(お家で学校のことを話すときも同じかもしれませんね)。
 あるお父さんは、そのことをよく分かっている方で、子どもの前では学校や先生のよいところだけを話し、疑問に思ったことや気になることは、学校に来られて、「〇〇についてですが、先生のお考えを教えてください」と率直に、そしてにこやかに話してくださいました。ですから、家庭と学校との間を子どもが運ぶニュースは、常に楽しく明るい話が中心です。
 家庭と教師の共通の願いは子どもがよりよく成長していくこと。その願いを同じにするお家の人と先生が「仲良し」であれば、情報交換や協力が進み、効果絶大です。上手な「おしゃべり」はかしこい子育ての秘訣だと思うのです。(新川靖・発達教育学部助教)

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