赤穂民報
関福大リレーコラム・才能開発の教育は家庭から(11月25日)
子どもたちの才能を開発するために、家庭でできることは何でしょうか。アメリカで一流のスポーツ選手、芸術家、科学者等の生育歴を調べ、共通の条件を導き出した研究調査があります。
それによると、4つの共通したことがあったのです。まず1つめは、お母さんが教育に関して無関心ではなかったこと。いわゆるお受験ママ、教育ママとは異なりますが、子どもの教育や将来のことについて考えていたということです。孟母三遷の教え(※)のように、教育にはそれなりの環境や条件を整えておくことに越したことはないのです。
2つめは、子どもへの接し方です。小さいときは善いことも悪いことも受け止め、大きくなるにつれて善いことは善い、悪いことは悪いと言ってくれたということ。何があっても「我が子は良い子」と受け容れる母性的な愛から始まり、成長するにつれて「良い子が我が子」と、ルールや約束、役割を果たせる子を我が子と認める父性的な愛へと変わっていったということです。家庭教育は母性的な愛が原点、出発点ですが、成長のためには父性的な愛によって親離れをし、自分の足で立って歩めるようにしていかねばなりません。このような母性と父性の両方の愛が教育には必要であり、このことは家庭だけでなく、学校の先生も含めて子どものまわりにいる大人にも求められることです。お母さんが母性、お父さんが父性の役割をする場合もあれば、その逆もあるし、一人で両方の役割をしなければならないこともあります。おじいちゃんやおばあちゃんは何があっても孫はかわいいので母性的な役割をお願いし、お母さんやお父さんが適切に父性的な役割をしなければならないことが少なくありません。
3つめは、どの人も読解力があったということ。文章を読み取る力、ことばの力です。英語も、算数、数学、他の教科も、それらの基盤にはこのような国語の学力があるのです。ただ国語の学力は、他の教科と違って短時間では成果が上がりにくいものです。だからこそ、学校での学習をおろそかにしないこと。読書は国語の学力向上に効果的です。読解力だけでなく、語彙を養い、価値観と人間性を豊かにするし、振り返っての感想文は文章力を養うだけでなく、自分を見つめ直す機会にもなります。授業中のノートも、黒板に書かれたものだけを写すのではなく、これは大切と思ったことを書き加え、イラストや図を加えて楽しみながら自分なりにまとめ直すこと。これはどの教科でもできますし、国語の学力向上につながります。何よりも大きくなって社会に出ても役立つ力です。
4つめは、小学校から中学校、高校、大学等々、学校生活のどこかで人生の師と仰ぐ先生に出会っていること。これは家庭教育からは手が離れますが、大切なことです。自分を超えた存在があることは、謙虚に自分を見つめ直す契機になります。名こそ惜しけれ、恥ずかしいことはしない、師が目の前にいますが如くです。
この研究調査はブルームという研究者によるものですが、我が国の評価の研究にもっとも影響を与えた研究者であり、子どもたちの通知表もこのブルームの考え方に基づいて作成されています。(加藤明学長)
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(※)孟母三遷の教え=中国・戦国時代の思想家、孟子の母は、はじめ墓場のそばに住んでいたが、孟子が葬式のまねばかりしているので、市場近くに転居した。ところが今度は孟子が商人の駆け引きをまねるので、学校のそばに転居した。すると礼儀作法をまねるようになったので、これこそ教育に最適の場所だとして定住したという故事。
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