赤穂民報

スズメの恩がえし(12月2日)

 私は、北海道に心ひかれて、「知床(しれとこ)」、「宗谷(そうや)」、「利尻(りしり)・礼文(れぶん)」、「小樽(おたる)」、「札幌(さっぽろ)」、「函館(はこだて)」などを訪ね、北海道が抱えている課題について考える機会を得ました。
 その中で、いつも頭から離れなかったのが、厳しい自然の中で人を愛し、動植物を尊び、神を恐れる暮らしの中で作り上げられたアイヌの伝承文化です。
 絵本『アイヌ ネノアン アイヌ』(福音館)のなかに、「スズメの恩返し」という物語があります。
 十勝川のほとりのコタンの村に伝わる「スズメ」と村人のお話です。
 スズメは、ツバメとちがってヒエ(稗)、アワ(粟)、米や麦などを食べ物にしているため、農業をしている人たちにとっては、厄介者で、ことあるごとに追い払われてきました。
 アワやヒエの取り入れ作業のときのことです。
 いつものように追い払われようとしたスズメに、村の長の娘が優しくアワやヒエを与えました。やがて、恩を受けたスズメは病気で亡くなった娘さんを生き返らせます。
 この物語を読んでいて感じたことは、スズメが厄介な小鳥ではなく「神」がアイヌの人々に与えた小鳥だということです。
 このような考え方は、クマを始めすべての動植物にも当てはまります。
 人間の生活に少しでも邪魔になるものは取り除こうとする私たち。身近な動植物を暮らしに受け入れる心豊かな生活がしたいものです。
 アイヌの伝承文化から多くのことを学んでいきたいものです。
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『アイヌ ネノアン アイヌ』○文/萱野茂○絵/飯島俊一○福音館

(『アイヌ ネノアン アイヌ』 ○文/萱野茂 ○絵/飯島俊一 ○福音館)

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