赤穂民報

関福大リレーコラム・子育てを哲学する―(3)「子育て」と「倫理」(3月17日)

 子育ては、「どうすれば良い子育てができるのか」といった「育て方」に、つい目が行きがちです。ここでは子どもの成長という価値を基準に、良い悪いが判断されがちです。今回は、こうした一般的な「子育て」とは異なり、「倫理」という観点から子育てについて考えたいと思います。
 倫理とは、「人としてすべきこと/してはならないこと」、言い換えれば、人間の行いに関する善悪のことです。「殺してはならない」「盗んではならない」「人に優しくしましょう」、これらはみな「倫理」です。こうした倫理の基盤にあるのが「人間はとても大切な存在である」という人間理解や価値観です。人間はとても大切な存在、だから、殺してはいけないし、優しくするのです。
 「人間はとても大切な存在である」という人間理解は、「他ならぬかけがえのないわが子、とても大切なこの子」といった愛情のこもった子育ての中で培われます。すなわち、子育ては倫理の基盤を培います。しかし、それだけではありません。子育てには「倫理に気づかせてくれる」といった働きもあります。
 例えば、仕事のことでむしゃくしゃし、その気持ちを何の責任もない子どもに、八つ当たりして荒々しい言葉を投げかけたとします。その時、そこには怯えた子どもの顔があり、その眼差しに「してはいけないことをしてしまった!」と感じることがあります。これを哲学では(かなり玄人筋の話ですが)「顔の体験」といいます。この体験こそが、「人間はとても大切な存在である」という人間理解と並ぶ、もう1つの倫理の基盤です。
 このように子育ては、倫理の基盤が生まれるとても大切な営みです。子育てを「育て方」だけではなく、「倫理」という観点から捉え直して欲しい、そして、「大切な営みだから、社会全体で支援する」といった発想を持って欲しい、と思っています。(中村剛・社会福祉学部 学部長)

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