赤穂民報

関福大リレーコラム・時々の初心を忘れないように(4月14日)

 新年度が始まりました。学校では新1年生が、会社では新入社員が入ってきて学校や職場が華やかになりました。在校生も一つずつ学年が上がり、これまでの社員もキャリアを一つ積み重ねることになります。
 新しく入ってきた人も、これまでからの人も「ようし、今年もひとつがんばるぞ」と意気込みも新たに新年度を迎えていると思います。草花の開花や芽吹き、日ましに春めく自然と相まって、このような意気込み、新鮮な気持ち、生命力が内から湧いてくるのが春であり、新年度なのです。
 「初心忘るべからず」これは室町時代に能を大成した世阿弥が、能の修行のあり方について記した書(花鏡)の中に、出てくる言葉です。誰しも、物事に慣れてくると慢心してしまいがちになりますが、学び始めた頃の新鮮な気持ち、謙虚な気持ちを忘れてはならないという戒めです。新年度の新たな意気込みとともに、銘記しておきたい言葉です。
 世阿弥は「初心忘るべからず」に加えて「時々の初心忘れるべからず。老後の初心忘るべからず」とも書いています。小さいときは何をやってもかわいいでほめられ、許されるが、大きくなってくると身体の成長に負けない芸の技の修得が伴わないといけない、年を重ねると円熟した芸で身体の華やかさの衰えをカバーすることが求められる。つまり、その時々の初心、成長課題を忘れず励まないといけない、ということなのです。
 新年度が始まったことを機に、新入生だけでなく、各学年の初心について子どもと一緒に考えてみるといいと思います。もちろん私たちも、親として、大人としての今年度の初心について考え、志を立てるのもよいのではないでしょうか。
 教員なら、初めて先生になったときの初心、中堅になったときの初心、リーダーシップをとる年齢になったときの初心、管理職になったときの初心等々、その時々の新たな気持ちで成長課題、克服課題を解決しながら人間として成長していくように、ということです。換言すれば、熱意と謙虚さをもって、学び続ける教員でなければならないということです。退職後の初心ももちろん大切です。自分自身のこれからの人生設計のもとに初心を立て、しがらみにとらわれず、わくわくしながら毎日を過ごせるわけですから。
 「才のともしきや、学ぶことの晩きや、暇のなきやによりて、思いくずれて、止むることなかれ」これは、本居宣長の「うひ山ぶみ」からの引用ですが、才能や時間がない、学び始めが人より遅い、そんな言い訳や先送りでごまかさず、努力を惜しまずにねばり強く取り組めば、道は自ずと開かれるものとの教えです。(加藤明学長)

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