赤穂民報

関福大リレーコラム・話し言葉は心を写す鏡(7月20日)

 すぐれた話し言葉は、その人の思いや気持ちや考えが、美しく正確に、しかも自由に表現されたものであるといわれます。
 ある会合でのことです。参加者の一人が、自らの経験をもとに意見を述べられました。しかし、その話は長く、複雑で、あまりよく分かりませんでした。話の長さだけが印象に残りました。
 自分の話し言葉ももしかしたら聞き手にとっては聞き苦しいのではないかと思いました。そこで、人に話すときの話し言葉はどのようなものか考えてみました。私なりにいくつかげてみます。
 1つ目は、「イントネーションが綺麗なこと」です。私たちは、話すときに、その内容に合わせてつぎつぎと表情を変化させていきます。その時は、話している言葉の調子が非常に静かで内面的となります。こういう内面的な話し声が出せるのは、ふだんの生活でそういう力が十分に養われているからです。
 2つ目は、「相手を大事にしていると、愛情を感じ言葉が美しくなること」です。お互いに相手の持っている可能性を信じ、それを認めながら、相互の力を出し合うと、自分も考え、内容をもった発言となり人の話も考え考え聞いています。その両方の交流の中から新しいものを創り出すことに喜びを感じます。聞く人の耳に快く響くような、美しい話し方をすることが大切です。
 そして、3つ目は、「正確に表現し、言葉の生命を重んずること」です。正確で、むだのないものと、磨かれた感覚とが一つになって声となったとき、美しい調子やリズムをもった、美しい話し言葉が生まれてきます。深い思考や感情を相手に伝えることもないし、相手と交流し反響し合うこともありません。
 このように、できるだけ正確で個性的な言葉の調子やリズムを持った話し方が大切です。30秒で言えることを5分もかかっていえば、その内容は、はっきりしなくなります。聞き手は、頭が痛くなり気が重くなり、いらいらしてしまいます。
 言葉を美しい内面的なものにするためには、話し手自身が、まず自分の言葉を正確でむだのないものにします。そして自分にも問いかけ、人にも問いかけ、自分にも人にも新しいものが生まれてくるような話し方をすることが必要だと常々思っています。(小野間正巳・教育学部児童教育学科教授)

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