赤穂民報

関福大リレーコラム・何をおいても知的好奇心と自尊感情を育てること(1月25日)

 論語の中に、孔子の弟子が「人生のなかで、これだけは大切にしなければならないことを一言でいうと何ですか」と問うところがあります。
 子どもに聞かれたら、どのように答えますか。絆、家族、生命、夢、希望、友だち、生きがい等々、正答は一つではありません。自分の人生を振り返って導き出す答えはどれも正解であり、答える人一人ひとりの人生観、価値観が現れるからです。
 孔子は「それは恕だ。自分がやってほしくないことを他人にやってはいけない」と答えます。これができればいじめは起こりません。これは相手の立場からみるという見方・考え方ができることであり、メタ認知ができることです。心づかいや思いやりも、相手の立場に立たないと押しつけになることもあります。
 ここまでは以前に書いたことですが、それでは子育てのなかでこれだけは大切にしなければならないことは何か、と問われたらどう答えますか。
 この問いを子育ての先輩や友人にたずねる環境は整っているでしょうか。身近に相談する人がいるのに、ネットに聞いてすませていることはないですか。そうだとしたらもったいないことです。まわりの人の知恵や助けを借り、子どもの成長をいっしょに見守ってもらいながらの子育ては、子どもからみれば「私はみんなから大切にされている」という自尊感情の原点を育むことなのです。
 私なら「子育てにおいてこれだけは大切にしなければならないことは、知的好奇心と自尊感情を育てること」と答えます。
 今、わが国の子ども達の学力は勉強が得意組と苦手組の2極化状態にありますが、苦手組に共通していることの一つは、学習課題や学習活動に取り組む意欲や興味や関心が不十分、つまり知的好奇心が育っていないことであり、もう一つは学習の成功体験による充実感や効力感からの自尊感情、やればできる人間なんだという自分自身に対する肯定的な見方、つまり自信が育っていないことです。
 知的好奇心を育てるためには、まわりの者が知的好奇心旺盛になること。自然や人々(社会)、文化の中で疑問や不思議に思うこと、好きなことやこだわりをもつことに取り組む姿を見せ、子ども達にもそのおもしろさを伝え、一緒にやろうと働きかけること。同時に子ども達が興味や関心を持っていることに耳を傾け、一緒にのめり込むことです。
 自尊感情を育てるために第一に大切なことは、この子はすばらしい、能力があると信じ切ること。「どうせがんばったって」などと、自尊心を傷つけることばを絶対に口に出さないこと。些細なことでも、ほめたり、励ますことを忘れないこと。知的好奇心と自尊感情は絡み合っているものです。片方が育てば、もう片方も育ちます。念ずれば花開く、子ども達の未来は青天井です。(加藤明学長)
 * * *
 次回は教育学部児童教育学科の伊崎一夫教授が執筆します。お楽しみに!

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