赤穂民報

関福大リレーコラム・正しく生きるための第四歩〜他者の尊厳を開示する(5月15日)

 誰もが自らの人生を豊かに営める社会で生活することは、時代や地域が異なろうと、とても重要なことです。しかし、障害や貧困、あるいは出自や性別など、自分の努力だけでは解決できない原因に根ざした格差に苦しみ、また差別に喘いでいる人たちがいます。
 その現実に対して社会福祉は、限りある社会資源を公平・公正に活用することで、理不尽に虐げられている人たちの生活を回復し、すべての人が充実した人生を営める社会の実現を目指しています。
 これらはすべて、自己責任を問えない原因を自分のこととして受け止める、すなわち他者の痛みを私の痛みとして理解する思想に根ざしています。
 ところが、私以外は他人なので、相手が何を考え思っているのか、完全に理解することはできません。同じように相手から見て私は他人なので、私の気持ちを相手が理解してくれることもありません。言い換えれば、人間は「わかり合えない関係」にあるといえます。このことを前提としながら、それでも他人の生活をまなざし、豊かな社会を実現するために私たちはどうすれば良いのでしょうか。
 私たちの人生は、生まれることで始まり、死ぬことで終わります。つまり一人ひとりが自分の世界を生きている、といえます。この世界は地球儀的に表される世界ではなく、自分の心のうちに広がる私だけの世界を意味しています。同じように、他人も自分の世界を生きています。その世界は私が侵すことのできない、その人だけの世界です。つまり私たちは、別々の世界を生きているのです。
 だからといって自分勝手に生活すれば、対立や混乱が生じてしまいます。そこで、わからないからこそ、その人の世界をわかろうと努めていくことが求められるのです。その人の世界を理解することで、その人のかけがえのなさ、すなわち「尊厳」が開示されます。その人の尊厳を大切にしようとする姿勢が、豊かな社会を実現する土台となります。そして、その姿勢こそが「正しく生きる」ことといえます。(社会福祉学部社会福祉学科准教授・岡崎幸友)
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 次回は教育学部保健教育学科の岡井千沙子助教です。お楽しみに。

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