赤穂民報

「人と猫の共生目指す」地域猫活動スタート(8月28日)

 飼い主のいない猫に避妊・去勢手術を施して元の場所で適切に飼育管理する「地域猫活動」を広めようと、市民有志のボランティアグループがこのほど発足した。目指すのは「人と猫が共生できるまち」。活動の一環で9月5日(日)に保護猫の里親を募集する会を開く。

 新たに活動を始めたのは、「赤穂の野良猫を地域猫にする会」(土居裕二会長)。土居さんと妻の佳世さん(51)が活動仲間の川崎健二さん(51)・悦子さん(50)夫婦とともに今月15日に立ち上げた。市内で未だに野良猫が多く、野良猫の産んだ子猫がカラスやタヌキに殺されているなど悲惨な話を聞き、「これ以上、不幸な猫が増えないよう行政に働きかけるなど、できることから取り組んでみよう」と集まった。

 地域猫活動は、「捕獲(トラップ)」「不妊手術(ニューター)」「元の場所に戻す(リターン)」のそれぞれの頭文字を取って「TNR活動」とも呼ばれる。手術済みの目印に片方の耳先をV字にカット(さくら耳)して野良猫と見分けがつくようにし、地域の理解と協力を得た上で餌やり、トイレなどのルールを守って適正に管理。子猫を産まない一代限りの命をまっとうさせる。

 こうした活動は横浜市磯子区で1990年代後半に始まった。同区では行政と住民、動物病院が連携して「猫の飼育ガイドライン」を普及させるための推進協議会を設立。区役所で猫の譲渡会を毎月開催するほか、ボランティアの負担を軽減するために不妊手術費用の助成制度を設け、野良猫の減少に成果を挙げているという。

 同様の取り組みは全国に波及し、兵庫県内でもこれまでに11市が助成制度を導入して地域猫活動を支援している。赤穂市は「今後調査研究して対応していく」(今年6月議会で中谷行夫議員の一般質問に対する牟礼正稔市長の答弁)という段階で、善意の市民が自腹を切って里親探しや地域猫活動に取り組んでいるのが現状だ。千鳥地区では昨年、自治会がカンパを募ってTNR活動を実施した。

 兵庫県動物愛護センターがまとめた「猫の適正管理普及推進のためのガイドライン」によると、メス猫は早ければ生後5か月ほどで子を産めるようになり、一度に2〜6頭の子猫を産む。2〜4月と6〜8月をピークに年に複数回の繁殖期がある。「1頭から1年で80頭まで増える」との試算もあるほどだ。完全屋内飼育の飼い猫の寿命が15〜20年とされるのに対し、屋外で生活する飼い主のいない猫の寿命は交通事故や猫同士の感染症などで3〜5年程度だという。猫の遺棄や野放しによる繁殖は地域の環境衛生を悪化させるだけでなく、不幸な猫を生み出すことにもつながっている。

 赤穂市内でも猫に関するトラブルは少なくない。赤穂民報に寄せられた声だけでも、「毎日のように畑に糞をされてかなわん」「野良猫に餌だけやって、あとの世話はしない人がいる。注意したら『自分の猫じゃない』と言われた。無責任ではないか」「たくさん猫を飼っていた近所のお年寄りが亡くなり、残った猫が野良になった」「ごみステーションに生きた子猫が捨てられている」など。苦労してTNRを済ませた場所に、また新たな捨て猫が遺棄されることもあるという。

 「野良猫を増やさないための仕組みづくりが必要」と土居さん。「地域猫活動や正しい猫の飼い方を啓発するなど行政、市民、ボランティアの三者が協力しないと解決しない」と訴え、近隣市町で地域猫活動に取り組んでいるボランティアや団体にアドバイスを仰ぎながら「少しずつ、できることから始めていきたい」と話す。

 5日の里親会は加里屋まちづくり会館で午後5時〜7時半。入場人数を制限するなど感染症対策を徹底して開く。市内で保護猫活動を行っているボランティアグループ「ハピネス・オハナ」との共催で生後3か月前後の子猫約15頭についてワクチン・検査の実施、完全屋内飼育などを条件に里親を募集。猫の引き取りは行わない。手作りのアクセサリーやバッグなどのフリーマーケットで収益を今後の活動費用に充てる。問い合わせはメールako.noraneko.chiikineko@gmail.com。

(「人と猫が共生できるまち」を目指して活動を始めた「赤穂の野良猫を地域猫にする会」)

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