赤穂民報

関福大リレーコラム・「学びほぐす(unlearn)」〜生涯学習を楽しむ(12月23日)

 年の瀬も押し迫ってきました。今年は新型コロナウィルス感染症防止のため、「おうち時間」を充実させる過ごし方が注目され、自分の働き方や生き方を見直す機運が生まれました。なにか新しい挑戦をした方も多かったのではないでしょうか。

 「生涯学習」という言葉をご存知でしょうか。人生100年時代と言われる昨今、生涯学習が注目を浴びています。生涯学習とは文字通り、生涯にわたって行う学習活動のことを指します。

 学習に「学校で行われるもの」というイメージを持っていると、生涯学習という言葉はピンとこないかもしれません。しかし、私たちは、生涯を通じてより豊かで充実した人生を送るために、学校教育のみならず、文化活動、スポーツ活動、ボランティア活動、趣味など、日々、生涯学習を行っています。自分のやりたいことに積極的に取り組み、自身で「学んだ」と思えることであれば、それは生涯学習であり、人生に生きがいをもたらす活動となるでしょう。

 子どもの学習は、たくさんのことを学ぶことで「形をつくっていく(forming)」ものだといわれます。それに対し、おとなの学習では「形を変えていく=変容していく(transforming)」ことが重視されます。

 哲学者の鶴見俊輔さんが学生だった頃、ヘレン・ケラーから学んだのは「学びほぐす(unlearn)」ことだといっています。たくさんのことを「学び(learn)」、それらを「学びほぐす(unlearn)」。鶴見さんによると、「学びほぐす」とは、まず、型どおりのセーターを編み、次に、もう一度もとの毛糸にもどしてから、自分の体にあわせて編みなおすことです。

 私たちは、これまで積み重ねてきたさまざまな経験や価値観が混じり合った存在です。知らぬ間に物事に対する価値観が固まっていき、「こうあるべきだ」と自分の思考の枠にとらわれてしまうこともあるでしょう。

 先行きが不透明な時代にあって、しなやかに、より充実した生活を送るためには、思考の枠を「学びほぐす」ような「形を変えていく=変容していく」学びが求められるのではないでしょうか。新しい挑戦をしてみることは、これまでの自分の固定観念を崩すのに役立ちます。これまでとは違った風景が広がっていることに気づくかもしれません。

 この時期は来年へと思いをはせる時期でもあります。来年に向けて、積極的に取り組めることを探してみるのはいかがでしょうか。(教育学部保健教育学科講師・猿山隆子)

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