赤穂民報

関福大リレーコラム・いくつになっても学ぶ幸せ(1月1日)

 超高齢社会といわれる日本において、幸せな暮らしを実現していくためには、いかに健康に高齢期を過ごすかということが重要な課題となっています。

 身体的な健康はもちろん、精神的な健康も重要です。人は誰でも、加齢とともに体力や身体機能が衰えます。しかし、精神や「知恵」の側面では、加齢とともに獲得するものがあることが研究の中で明らかにされています。

 人生の後半部を表現する言葉にエイジング(aging)があります。「加齢」も「老化」もエイジングの訳語です。「加齢」や「老化」という訳語には、ネガティブなニュアンスがつきまといますが、エイジングには、「熟成」「円熟」という意味が含まれています。例えば、ワインやチーズを発酵させてまろやかな味を引き出すことをエイジングといいます。「ねかせる」ということです。

 この考え方は人間に当てはめることもできます。老年学の分野では、人は、老化によって失うものを、精神面や能力の円熟で補いながら、生涯、成長を続けていくと考えられています。こうした考え方は、年齢を重ねることの豊かさ・奥深さを教えてくれます。

 内閣府が実施した「生涯学習に関する世論調査」(平成30年7月調査)では、60歳以上の方のうち「生涯学習をしてみたいと思う」と回答した人が81・4%にのぼっています。退職によって自由な時間ができたこと、また、インターネットを通じた学習の機会など、気軽に学べる環境が整いつつあることも学習意欲が高まっている理由といえるでしょう。

 60歳以上の人の関心が高い分野は「健康・スポーツ」(健康法、医学、栄養、ジョギング、水泳など)、「趣味的なもの」(音楽、美術、華道、舞踊、書道、レクリエーション活動など)などが上位に上がっています。知識や技術を習得するだけでなく、講座やサークルなどの学びの場で生まれる新しい交流も生涯学習の大きな魅力のひとつになっています。

 日本の高齢化は進んでいますが、多くの学習意欲に溢れている方々がいます。ライフステージに応じた生涯学習を楽しむことは、年齢を重ねることの価値や、昔から語られてきた「老化」のプロセスとは異なる彩りが見えてくるように思います。(教育学部保健教育学科講師・猿山隆子)

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