赤穂民報

市民病院の経営形態「現行が適当」検討委報告(1月20日)

 慢性的な赤字経営の抜本的見直しについて外部有識者を中心に協議した赤穂市民病院経営検討委員会は20日、現行の経営形態を維持しつつ経営改善を目指すよう提言する報告書を赤穂市に提出した。

 独立行政法人化や指定管理者制度導入、あるいは民間譲渡といった経営形態の変更を伴う改革は選択せず、診療科の削減やコストカットなどによる経営改善を勧めており、「抜本的な経営見直し」と呼ぶには疑問の残る提言となった。

 同病院は2005年度以降、16年連続で赤字を計上。20年度の純損失は10億3500万円に上り、資金不足比率は起債発行に総務省の許可が必要となる10%を超えた。一時借入金の残高は20億円に達している。牟礼市長は「現在の経営状況のままでは、資金不足の解消は困難」として昨年8月に経営検討委を設置。病院経営や県下の医療状況に詳しい有識者を含む10人のメンバーが計4回の会合を開いて報告書をまとめた。

 報告書はA4判33ページ。検討委で最大の焦点となるとみられた経営形態のあり方については、独立行政法人や指定管理者に移行した場合のデメリットとして「給与を収益に見合った水準に減額する例が見られ、職員のモチベーションが下がる」「新旧の大学医局が異なると移行がスムーズに進まない」「移行期間として2〜3年を要する」などと指摘した上で、「まず、この2〜3年の経営改善を着実に行うことが重要」「持続可能な病院運営に取り組むことが、現実的な対応」と言及。引き続き、現行の経営形態を維持することが「適当」と結論付けた。

 また、具体的な経営改善策として、▽地域包括ケア病棟の受け入れ強化▽1人の看護師が受け持つ入院患者人数を現行の「7人」から「10人」に見直す▽周産期医療、小児医療など診療機能の見直し▽PETーCTの廃止▽病院運営と経営に精通した専任の病院事業管理者の配置ーなどを挙げ、これらすべてを実行できた場合の効果額を「年間で5〜6億円」と推計した。専門家が経営状況を定期検証できる仕組みづくりを提案した一方、「経営改善を着実に進め、市民の安全・安心を強固なものにするため、市の財政支援について是非とも検討をお願いしたい」とさらなる出資を求めた。

 検討委の中村隆彦委員長(赤穂市医師会長)は「できる限りの議論は尽くした。この危機を脱するために積極的な対応を」と市に要望。報告書を受け取った牟礼正稔市長は「市民病院として今後見直すべき方向性を示していただいた。報告書の内容を尊重し、できるだけ速やかに、できるところから取り組んでいきたい」などと応じた。

 報告書は同日までに議会にも示され、1月26日(水)に開く全員協議会で質疑する予定。議員からは「とても抜本的見直しとは言いがたい」「これでは市民の理解は得られない」などと早くも厳しい声も上がっている。

 報告書は赤穂市民病院のホームページで公開されている(この記事の下にリンクあり)。

(赤穂市民病院経営検討委員会の報告書を牟礼正稔市長(右)に提出する中村隆彦委員長)

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