赤穂民報

《市民病院医療事故多発》内部検証の正当性に疑義(2月12日)

 赤穂市民病院(藤井隆院長)の医療事故多発問題をめぐり、院内医療事故調査委員会(以下医療事故調)が正規に開かれたとは言いがたい形で内部検証を終わらせていたことが複数の病院関係者の証言でわかった。

 関係者らの話では、事故に関して病院幹部が集まって話し合う場はあったものの、「ちゃんと手続きに基づいて行われたものではなかった」といい、病院の事故検証の正当性が疑われる。

 同病院の「医療安全対策実施要項」では、医療事故(医療に関わる場所、医療の全過程において発生するすべての人身事故で医療従事者の過誤・過失の有無を問わない)を患者への影響の度合いに応じて4段階に分類。最も重いレベル5(事故が死因となった場合)と2番目のレベル4b(永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う)が発生した場合は月1回の医療安全推進委員会を待たず、院長の指示で医療事故調を開き、事故に関する調査や医療訴訟への対応を協議する取り決めとなっている。

 実施要項によると、医療事故調は院長をはじめとする幹部職員と医療安全管理者など十数人で構成され、事故を起こした当事者も「関連職員」として招集される。しかし、関係者は、「事故が発生して以降、院長応接室で院長を交えた話し合いは何度もあったが、(一連の医療事故に関わったとされる脳神経外科医師が)会合の場に呼ばれたことはなかった」と証言。また、別の関係者は「話し合いには参加したが、それが『医療事故調査委員会』だという認識はなかった」と認めた。協議した内容も「どのように患者家族に対応すれば医療裁判にならずに済むか」というテーマが中心だったという。

 一連の医療事故は2019年7月に着任した男性医師が翌年3月に手術執刀を禁止されるまでの間に関わった手術で起きた(男性医師は昨年8月末で退職)。病院は計8件の医療事故があったとし、「8件すべてについて外部有識者の検証を受けた上で院内で検討した」結果、そのうちドリルで腰の骨を削る手術中に誤って神経を切断した2020年1月の症例(患者と家族が病院と医師を相手取り係争中)のみ「医療過誤」を認め、他7件は「合併症か病気そのものによるもの」として過失を否定した。

 しかし、男性医師が裁判に提出した書面では「(自身の)施術が原因となって障害が生じたと考えられる症例は、本件を含め2例」としており、もし、医療事故調で本人への聴き取りをしていれば、医療過誤を認めざるを得ない症例が少なくともあと1件増えていた可能性がある。また、病院は公表していないものの、8件の中には脳腫瘍の摘出手術を受けた患者が手術直後から昏睡状態となったまま死亡した症例もあり、現時点では「合併症か病気そのものによるもの」として処理されている。

 市民病院に勤務していた元職員は次のように語る。

 「事故調は過失の有無についても判定するので後々に影響することでもあり、厳格に行うべきもの。参加者が『事故調とは認識していなかった』などあり得ない。病院が医療過誤を隠蔽しようとしたとまでは思えないが、結果的には調査や検証が不十分だったと言われても仕方がないのではないか」

 事態を重く見た日本脳神経外科学会は「医療安全面での問題が否定できない」などとして昨年12月に同病院に情報提供を求めたが、病院が提出した資料は十分ではなかったという。学会は1月6日に「検証委員会の議事録」を開示するよう要請したが、1月末時点で病院から追加提出はなく、期限を定めて督促したとしている。

 医療事故調は適切に行われたのか。同病院は医療事故調の次第や議事録の公文書開示請求に「個人情報や争訟に関する」として非開示を決め、開催した日時や回数すら明らかにしていない。学会への情報開示については、「弁護士に相談した上で、しかるべく対応する」(医療課)としている。

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