赤穂民報

関福大リレーコラム・STEAMからみる理科教育(1)〜生命編(3月12日)

 現在、予測困難なブーカ(VUCA)の時代と言われています。ブーカとは、英語の頭文字を取った造語です。

 このような時代に求められる教育とは何でしょうか? それは、幅広い分野で新しい価値を提供できる人材の育成です。理科教育では、STEAM教育が当てはまります。STEAMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)を指します。各教科を横断した学習が求められているのです。

 小学校3年生では、「昆虫の体のつくり」という単元があります。様々な虫を比較しながら、昆虫の体のつくりを調べます。最近は、虫嫌いの児童や教員が多いことが問題になっています。生きた昆虫を触って観察することが難しいのです。

 デジタルな時代も重なり、パソコンやタブレットなどを用いた学習が進んでいます。例えば、NHK for Schoolの「ものすごい図鑑」です。この図鑑は、昆虫を360度、どの角度からも観察できます。触覚には毛があること。目はツブツブの集まりであること。拡大することで、見えてくる世界があります。

 生きた昆虫を肉眼で見るよりも、はるかに細かく観察できる。いつでも何度でも観察できる。これは、デジタル教材の良いところです。

 ある論文に、「生きた昆虫を扱わない授業は、児童が昆虫の体を正しく理解できない」という報告がありました。生きた昆虫からしか学べないこともたくさんあります。チョウを触るとサラサラとした粉が付く。これは体験からしか学べないことです。 
  
 授業ではモンシロチョウやアリなどの生きた昆虫も準備します。動いて分かりにくい時もあります。そういう時には、タブレットやカメラの登場です。昆虫を写真や動画で撮影してじっくり観察します。

 授業の後半では、粘土で昆虫をつくり、体の構造を確認します。

 こういった、科学、技術、芸術などの教科の枠組みを超えた授業が、理科教育では求められています。それを指導できる人材の育成に力を入れています。(教育学部児童教育学科講師・吉澤樹理)

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