赤穂民報

関福大リレーコラム・子育ての手段に『論語』(8月6日)

 日本経済の父と呼ばれた渋沢栄一が、令和6年に新一万円札の肖像となります。

 渋沢は、幕末から明治大正時代に約500の企業の設立、約600の社会公共事業に関わり、近代日本の発展に貢献しました。昨年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」が放送されご存じの方もおられるでしょう。

 渋沢の幼い頃からの愛読書が『論語』です。後年、異質なものを取り合わせた道徳と経済の合一説を説いた「論語と算盤」を著しました。論語は、約2500年前の古代中国の書物で、孔子と弟子たちの言行録です。日本に伝わったのは西暦285年頃。現在に至るロングセラーとなっています。

 論語は、人としての学びや徳などがまとめられたものです。日本人で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士の学問の素地も幼い頃より親しんだ論語でした。掛け算の九九を暗唱するように、論語の文字をそのまま声に出して読む素読により、学びの基礎となり教養や知識が身に付きます。現在、大リーグで活躍する大谷翔平選手は、「論語と算盤」を読み、投手と打者の異なる二刀流を実現させています。

 論語は、実にシンプルで人にとても大切な「仁(思いやり)」を教えています。子育てのバイブルにもなり、幼い頃より触れることで、その学びは心の奥底に蓄積します。東洋古典研究の加地伸行氏は、「人間をありのままに見とおし、そうした人間にとっての幸福とは何かという視点に基づいて道徳を論じ、そうありたいことを主張しているのが論語だ」と説かれています。

 江戸時代に、寺子屋で「論語」を学んだ子供たちは、常識や道徳心を養ってきました。そのDNAが今を生きる私たちに受け継がれたのが、東日本大震災の時でした。被災した人が避難所で沈着冷静に行動している姿が世界中に発信され賞賛の声が集まったことは記憶に新しいです。

 論語は人としての行動規範として「仁」の心が育まれているのではないでしょうか。子育ての一つの手段として、「論語」を活用されてはいかがでしょうか。(尼子尚公・教職センター教授)


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