赤穂民報
工事停滞のポンプ場整備 請負金額を増額へ(9月10日)
入札による落札業者決定から1年以上工事が行われていない赤穂市発注の加里屋中継ポンプ場の機械設備整備工事をめぐり、市は業者の請負金額を約1・5倍に増額する設計変更を行う方針を決定した。
市は「再入札すれば、工事完了までさらに時間がかかる上、資材高騰で落札額が高くなる可能性もある」などと説明しているが、市内の建設土木業界からは「本来なら市は契約解除して再入札を実施すべきで、市の対応はおかしい」と疑問視する声が出ている。
同ポンプ場は汚水を下水管理センターへ送るための施設。昨年4月に計4基あるポンプのうち1基の故障が判明した。故障したポンプを更新する請負業者を決める入札は同年8月に行われ、3社が参加。市内の土木工事会社が4895万円で落札した。最低制限価格は4344万円だった。他2社は8880万円と9980万円で予定価格(5792万円)を超過した(金額はいずれも税抜き)。
当初の工期は今年3月18日までだったが、期限が近づいても一向に工事は行われず、市は「ポンプの機器選定に時間を要している」「受注業者との契約事項に係る協議に時間を要している」(下水道課)として2度にわたり工期を延長。その後も現場で工事が行われることはなく、現在に至っている。
市が1日の市議会建設水道委員会協議会で行った説明と、市と業者の協議記録によれば、契約締結後に落札業者から「機器費については積算と乖離が生じており、設計金額で購入できる業者は見つからない」として契約金額の設計変更の申し出があり、解約も含めて業者側と協議。その後、市が発注した設計機器の製作可否を内部で再検証したところ、「製作が困難であることが判明した」という。
市は「製作が困難」とした理由を、「改めて業者から見積もりを取ったところ、(昨年の見積もりと同じ金額で施工可能だが)今は人手不足で受けられないとのことだった」と協議会で説明し、あくまでも市の積算に問題はなかったと強調。「全国各地で大雨が頻発しており、早期に更新工事を実施する必要がある」などと今回の対応を正当化した。設計変更により請負金額を「2900万円程度増額」する予定で、「他の2社の入札額を上回らないので支障はない」としている。
ポンプ業界に詳しい関係者は、「落札業者の入札額はポンプ本体の価格とほぼ同じ」で「設置費が丸々赤字になる」と指摘。市の最低制限価格は「どのような積算をしたのかわからないが、あまりに低過ぎる」という。
市内のある建設土木会社は「市の設計に誤りがないのであれば、業者は落札した以上、契約通り工事を遂行する責任がある。なぜ、市が業者に便宜を図るのかわからない」と首をかしげ、別の会社の経営者は「今後も資材高騰や人手不足を理由にすれば請負金額を増額してくれるのか。市は悪い前例を作った」と批判している。
* * *
赤穂民報は落札業者にも話を聞いた。
――なぜ、契約通りに施工できなかった?
「メーカーからプロペラ(スクリュー)部分は作れるが、駆動(エンジン)は作れないと言われた」
――入札前にメーカーに確認しなかったのか。
「駆動は大体これぐらいで出来るだろうと、見積もりを取らずにアバウトに入札した。そこはうちに非がある」
――契約を守れないのであれば、辞退すべきでは。
「辞退するつもりで手続きを進めていたが、市から『こちらも是正するので、工事してほしい』と低姿勢で話があり、非を認めたものと感じたので、受けることにした」
(機械設備整備工事の請負金額を約1・5倍に増額する方針が決まった加里屋中継ポンプ場)
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