赤穂民報
名人が語る塩づくり「塩は生き物。夜泣きもする」(10月23日)
かつて塩田があった地元の歴史にちなんだイベントが福浦地区コミュニティセンターで22日にあり、高知県田野町の製塩職人、田野屋塩二郎さん(51)が講演。「塩づくり名人」と呼ばれる塩二郎さんの話に約85人が耳を傾けた。
福浦地区には文政から昭和まで操業した「古池塩田跡」があり、日本遺産「『日本第一』の塩を産したまち 播州赤穂」の構成文化財となっている。地域の歴史を発信しようと、地元のまちおこしグループ「福浦ふっくらコットンボランティア」が「ウエスト・サイド・ソルト(福浦の塩)」と題してイベントを企画した。
東京出身の塩二郎さんは35歳で同県黒潮町の塩職人、吉田猛さんに弟子入りし、日本一の塩職人になることを目指して修業。2年後に独立した。顧客の注文に合わせて結晶の大きさや風味を変える完全天日塩は主にプロの料理人の間で評判となり、海外からもオーダーが入るほど。これまでに生産した塩は2000種類を超え、現在は7人の弟子を育成している。
塩二郎さんは講演で、東京から高知へ4度足を運び、ようやく吉田さんに弟子入りを認めてもらえたことや、夜間の土木作業員の仕事を掛け持ちして睡眠時間1時間で働いた修業時代を振り返った。「人と同じことをしていては日本一になれない」。毎日1時間ごとに手で混ぜる作業を繰り返して塩をつくるため、右手の小指は塩の重みで関節が屈曲した。
「塩は生き物。呼吸もするし、夜泣きする子もいる」と塩二郎さん。海水中に80種類くらいあるミネラルの加減で塩の味が変わるという。「どうやったらそうなるかはわからないから弟子にも教えられない。毎日毎日塩を混ぜるうちに匂いでわかってくる」といい、「弟子からは『もっと合理的にやったらどうですか』と言われるが、最後に頼りになるのは経験、勘ではないか。ハイテクが進む中、両方を取り入れることが大事と思う」と語った。
講演後は福浦地区沿岸部にある「古池塩田跡」を見学。汽水域の海水はミネラルが豊富で良い塩ができるといい、「千種川がある赤穂は適している。もし、赤穂で完全天日塩に取り組む人がいるならアドバイスしたい」と後継者の拡大にも前向きだった。
(「塩は生き物」と語った塩づくり名人の田野屋塩二郎さん)
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