赤穂民報

【社説】これ以上医療過誤患者と家族を苦しめるな(12月17日)

 12月8日の市議会一般質問で、あるブログについて質疑があった。「市民病院医療過誤記録 母の医療過誤に関する真実と家族の日記」というタイトルのブログだ。

 2020年1月に脳神経外科の手術で医療過誤に遭い、両足などに重度の障害がのこった患者(現在も赤穂市民病院に入院中)の家族が病院での出来事や病院側との日々のやり取りを綴っている。

 例えば、先月10日の投稿。「『病院側から具体的な金額提示を伴う和解案の提示を受けたにもかかわらずこれに納得せず、訴訟提起に至った』という誤った噂を流され、未だに『病院が提示した金額に納得できなかったと噂で聞きましたけど違うんですか?』等と聞かれます。」とある。

 患者家族によると、具体的な金額提示を伴う和解案が一度も提示されていないことは病院側の顧問弁護士にも確認済みだという。にもかかわらず、まるで患者側が賠償額が不満で裁判を起こしたかのような誤った情報が一部の病院職員から流布され、強い精神的苦痛を感じているという。

 また、先月21日の投稿。「母を精神病院へ転院させるため、事実上の追い出し作戦会議が上層部によって開かれたことを実際に会議に出席した病院関係者から直接お聞きしました。詳細についての記載は控えますが、内容は家族として、娘として聞くに堪えないものでした。患者側には一切告げず、後日、上層部自ら〇〇病院(精神科)の〇〇医師へ転院の打診を行いました。しかし、入院適応外との理由で断られたそうです。」

 「主治医より『院長と看護部長が病棟に来られて、家族さんへ退院の方向で説明するようにと命令されたので電話しました。上層部の命令には逆らえませんので…』という趣旨のお電話がありました。その後、主治医に確認したところ、『看護部長(副院長)さんから〇〇さん(母)を早く退院させるよう強い口調で何度も命令を受けているのは事実です』とのことでした。」

 患者は医療過誤の後遺症で激痛や膀胱障害も生じており、鎮痛剤の点滴が欠かせないほか、膀胱にカテーテルを入れて尿を排泄する導尿も必要で自宅での介護が困難な状態となっている。そんな中、精神病院への転院や半ば強制的な退院を強行しようとした病院の姿勢に、患者家族はブログで「母をまるで精神異常者のように扱い、患者側の同意も得ずに全く責任のない他の病院へ押し付けようと陰で画策する等の行為は、事故の責任を放棄しようとしているようにしか見えません」と悲しみを訴えている。

 一般質問では中谷行夫議員、家入時治議員がこの問題を取り上げた(本記事下のリンク「2022年第4回定例会一般質問の主なやり取り」参照)。

 病院当局は「ブログをされているということは承知しているが、内容については承知していない」と答弁し、投稿内容が事実かどうか明らかにしなかった。議員からの「患者への誹謗中傷の有無を調査しないのか」との問いには「調査するかどうか、この場で申し上げることができない」と答弁した。

 患者が医療過誤に遭ってから来月で丸3年になる。「なぜ医療過誤が起きたのか、真実を知りたい。防げたはずの医療事故を二度と起こしてほしくない」などといった思いで患者側が提起した民事裁判は、原告である患者側が今年2月に求めた証拠書類(医療事故の原因究明と再発防止策のために開いたとされる検証会議や院内医療事故調査委員会の議事録)の提出を被告の病院側がいまだに拒否し続けているため進行が停滞している。

 病院は今年6月の謝罪会見で「裁判の長期化を回避することで原告の負担の軽減を図ることができるのではないか」などと発言した。その言葉が偽りでないのなら、言行不一致をやめて一刻も早く証拠書類を提出すべきだ。これ以上、被害患者と家族を苦しめてはいけない。

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