赤穂民報

関福大リレーコラム・哲学と教育(2月18日)

 私は大学で「教育原理」や「教育哲学」を担当しています。また、「18世紀フランス教育哲学」を研究していますが、哲学は難しいものと考えられがちです。

 しかし、大学・大学院での研究、また3年近くのフランス留学を経て、哲学は決して難しいものではなく、人間が生きていくために必要な素材を提供するものだとわかりました。また哲学者は、大上段から崇高な理念や難解な概念を説くのではなく、自らの生活や生きた時代の状況から哲学を始めたということもわかりました。

 4回にわたるこの連載では、難しい話は抜きにして、哲学と教育の話や哲学者の著作を引きつつ、生きるためのヒントを考えていきたいと思います。

 さて、今回は私が留学していたフランスの哲学教育についてお話しします。

 フランスでは高等学校において哲学の授業が必修とされています。しかし、それは哲学に関する知識を詰め込み、博識な人間を目指す教育ではありません。また、哲学研究者を目指す生徒に設けられているのでもありません。哲学の教育は、専門的な知識を教えるのではなく、哲学によって、判断力を養成し、思考することの自由を学ぶのです。

 もちろん哲学に関する必要最低限の知識を学んだり、哲学者の著作を分析したりすることもありますが、まずは哲学に必要な論理的思考の方法を学び、暮らしの中で出会う哲学的な問題を分析し、それについて思考する姿勢や知的な責任感を発達させることが哲学教育で目指されます。そして現代社会を生きるために必要な知性を身につけます。

 16世紀の文人モンテーニュは、「哲学は生きることを教える術」と述べましたが、哲学とは、私たちがよく生きるために、あるいは幸せに生きるために必要な学問であり、生きることに直結した人類の知的営みなのです。

 それでは、「よく生きる」や「幸せに生きる」とはどういうことなのでしょうか。次回はこの人間が生きていく上で必要不可欠な問題について考えてみましょう。(中田浩司・教育学部児童教育学科講師)

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