赤穂民報

感じるありのままを筆に「心書」展(6月24日)

 心で感じるありのままの感情を筆を通じて自由に表現した「心書(しんしょ)」の作品展が東有年はりま台のギャラリー喫茶「ほっとたいむ」で開かれている。

 作者は耳が聞こえない中村千穂さん(57)=尾崎=。かわいいお地蔵さんのイラストにメッセージを添えた色紙や、「心」「生」といった一字をしたためたうちわなど思いの込もった作品約100点が並ぶ。

 中村さんは3歳のとき、高熱を下げるために注射した抗生物質ストレプトマイシンの副作用で徐々に聴力が弱まり、小学校低学年までにほぼ失聴した。2年前、岡山であったマルシェイベントで目にした心書家・大塚恵さんの作品に感銘を受け、大塚さんが開くワークショップで心書を体験。心にある気持ちを文字する過程で、自分の抑えていた気持ちが解放されていくのを実感したという。国語教師で厳格だった父の手ほどきで幼児期から書を習った中村さんだったが、「書が楽しい」と思ったのは初めてだった。

 元々「聞こえる人と聞こえない人の橋渡しをしていきたい」と願って手話講師や手話パフォーマーとして活動していた中村さん。「心書ワークショップなら、聞こえる人と聞こえない人が同じ場所で一緒に笑い、一緒に語り合える」と思った。一般社団法人心書協会のインストラクター養成講座を受講し、昨年5月に資格を取得。手話を交えて心書のすばらしさを伝える中村さんのワークショップは人気で、現在は自宅だけでなく明石でも講座を開いている。

 一昨年の3月、約30年間勤務した企業を早期退職した。コロナ禍で誰もがマスクを着用するようになって相手の口の動きが読み取れず、パーテーションで囲まれたスペースで黙々と業務をこなす息苦しさに耐えられなくなったという。年齢的に元気なうちに「自分にしかできないことにチャレンジしたい」と決意して会社を辞めた直後に心書に出会った。

 「今思えば、コロナがあったから新しい一歩を踏み出せたのかな」と中村さん。ワークショップを受講した生徒から「手話も教えてほしい」と言われることもあるという。「心書を通して、より多くの人たちとつむぎ、つむがれたい」。

 作品展「心書〜心で感じるありのままの書〜」は7月12日(水)まで午前8時〜午後4時(第2・4月曜は正午まで)。一部作品は販売あり。6月25日、7月2日、3日、9日は休み。TEL49・2992。

(「心書を通して人と人をつむぎたい」と生き生きと語る中村千穂さん)

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