赤穂民報

市民病院委託業者の責任者ら「ハラスメント被害」訴え離職(11月4日)

 赤穂市民病院の建物設備管理業務を担当している委託業者の社員のうち、業務責任者と副責任者の計3人が病院職員からのハラスメントで人権を侵害されて精神的苦痛を受けたとして、西播地域ユニオン労働組合に苦情を申し立てた上で離職したことが関係者への取材でわかった。

 病院は赤穂民報の取材に「不用意かつ適切とはいえない発言」があったと認めた一方、組合に対しては「業務上の指示の範ちゅう」などとしてハラスメントを否定している。

 組合によると、3人は同病院から建物設備管理業務を委託されている企業の社員で、同業務に就いて6年から20年近くの経験をもつベテラン。業務を所管する総務課管理係長による「顧客としての優位的地位を利用した侮辱的発言や過剰な報告要求、依頼事項の強要等」を少なくとも2年以上前から繰り返し受けた、と訴えているという。

 3人から相談を受けた組合は今年7月、病院開設者の赤穂市長に調査と対応を文書で要求。市は「厳しい発言をしたことは事実」「当該職員に対しては、十分言動に注意するよう指導」したと回答した一方、「ハラスメントと受け止められている内容は、病院としてはあくまでも現場責任者及び副責任者に対する業務上の指示の範ちゅうであったと考えている」「侮辱する意図はなかった」などとしてハラスメントは認めなかった。

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「入札額関係なく違う業者入れる」

 実際どのような発言があったのか。組合が3人から聞き取った内容によれば、▽責任者と副責任者の前で、その場にいない同僚社員のことを侮辱的なあだな(ポン、コツ)で呼んでいた▽委託業者の社名を挙げ、「こんなおかしい会社は辞めて転職した方がいい」と侮辱された▽「中央監視室(委託業者の従業員が勤務する部屋)をガラス張りにして、中の者がさぼっていないか監視できるようにせなあかん」と揶揄された▽「来年度の契約は入札金額関係なく違う業者を入れることも視野に入れている」と圧力をかけられた―などだという。

 一方、病院が開示したヒアリング記録によると、係長は、「(委託先の)対応に不満があったことから、会社の悪口のようなことを言ってしまった。従業員に対してというより、会社に対して思うところが強かった」などと弁明したとされる。

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会社侮辱され離職「悔しい」

 3人は、「(係長は)日頃から我々に対して威圧的で、ことあるごとに罵声を浴びせられ、契約外の業務を押しつけられたこともあった」などとも訴えているといい、「精神的に追い込まれ、正常な精神状態で業務を遂行することが困難」などと会社に申し出て7月末から8月初旬にかけて離職した。現在はそれぞれ同社の別の職場で勤務しているという。

 「ハラスメントさえなければ、働きがいのある良い職場だった。ハラスメントをした側は異動せず、被害を受けた自分たちが去らなければならなかったこと、家族を養って生計を立てている会社を侮辱されたことが悔しい。後に残った同僚が被害を受けないよう、病院には再発防止を徹底してほしい」などと話しているという。

 厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、顧客(カスタマー)からのハラスメントの要件の一つに「労働者の就業環境が害される」ことを挙げ、「労働者が、人格や尊厳を侵害する言動により身体的・精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったために能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」と定義している。

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組合「病院の考え方異常」

 同組合の大西廣・執行委員長は「より良い職場環境の模範となるべき公的機関で、このような発言が繰り返されていたことは残念。また、これらの発言を『業務上の指示の範ちゅう』だとしてハラスメントを認めない病院の考え方は異常と言わざるをえない」と厳しく指摘する。

 公立医療機関におけるハラスメント事案としては、今年8月、秋田県の大館市立総合病院で事務局の課長級職員が部下の職員2人に対し「すぐにやれ」「いつまでになったらできるんだ」などと高圧的な言動で経験や能力をこえる過大な指示や命令を頻繁に行っていたとして、減給の懲戒処分を受けた事例がある。

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ベテラン離職で支障はないのか

 病院は赤穂民報の取材に、「概ね指摘のあったような発言があったことは事実。当該職員に対して、言動については今後十分注意するように指導した」(総務課)と回答。また、他の委託業者との間では「トラブルは把握していない」という。再発防止については「ハラスメントの防止に関して8月に全職員に周知徹底を図るため通知した。8月から9月にかけて事務職員全員がインターネットによるハラスメント研修を受講しており、さらに11月に病院全職員を対象にした外部講師による研修会を実施する予定」とした。

 ベテランの現場責任者や副責任者が一度に離職したことによる支障がないのかどうかも10月24日に質問したが、「市長の出張が重なり、(回答の)決裁がとれない」として11月1日時点で回答はなかった。

(職員による不適切発言で精神的苦痛を受けたとして、建物設備管理業務の責任者と副責任者の計3人がハラスメント被害を訴えて離職した赤穂市民病院)

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