赤穂民報
《市民病院医療事故多発》被害患者が脳外科医を刑事告訴(12月2日)
技量未熟な医師によるずさんな医療ミスで全治不能の重い後遺障害を負わされたとして、赤穂市内の70代無職女性が11月30日、手術を執刀した40代男性脳外科医を業務上過失傷害罪で赤穂署に刑事告訴したことが関係者への取材でわかった。
女性は2020年1月、赤穂市民病院の脳神経外科で受けた腰の骨をドリルで削る手術中、誤って神経を切断され両足に重度の麻痺が残るなど重い後遺障害を負った。女性の家族によると、現在もしびれや突然の強い痛みに襲われる神経障害性疼痛、膀胱直腸障害に苦しんでいるという。
病院の依頼で手術時の動画を検証した日本脊髄外科学会の医師は神経切断が起きたときの手術状況について「止血がなされないまま、血の海の中でドリルの操作が実行」「ドリル操作も稚拙であり、見ていて非常にあぶなっかしい」「何か事故が起きても当然と思わせる手術操作」などと指摘。医療ミスの原因を「止血をこまめに行わなかったために、どこの部位の操作を行っているか自覚のないままに、スチールバーでドリル操作を行ったこと」と総括した。
女性は告訴状で、「およそ医師として最低限必要な技量すら疑わしい杜撰な手技であったことが明確」「人の命を預かる医師として、にわかには信じがたいずさんさであり、患者はまるで技量未熟な医師の手術の練習台として扱われていた」などと男性医師を非難。「過失の程度は極めて重大で、故意にも匹敵する悪質性を有する」「医療制度全体の信頼性を揺るがしかねないと言っても過言ではない」として刑事処罰を科す必要性を訴えている。
病院の発表などによると、男性医師は2019年7月に着任。同年9月から翌年2月までの約半年間に関与した手術のうち8件で医療事故が起き、当時の院長から手術禁止命令を受けた。手術禁止が解かれないまま21年8月に依願退職し、現在は別の医療機関で勤務している。赤穂市民病院は22年8月に日本脳神経外科学会から「医療安全管理体制に安全教育上の重大な懸念事項がある」などとして専門医訓練施設の認定を停止され、今なお解除されていない。
これまでに女性は男性医師と赤穂市に対して損害賠償を求める民事訴訟を提起して係争中。一方、男性医師は医療ミスが起きた要因を「(上司の科長の)命令に従ったことが原因」とした上で「手術禁止命令の必要性はなかった」と主張。当時の院長と科長、赤穂市を相手取り損害賠償を請求する民事訴訟を今年10月に起こした。
告訴状を受理した赤穂署は赤穂民報の取材に「個別の案件については答えられない」としたが、遅くとも昨夏ごろには水面下で捜査に着手していたとみられる。今年に入ってからは殺人や傷害など生命、身体に係る犯罪を担当する兵庫県警捜査1課の捜査員が医療事故に遭った患者や同病院の医療従事者など複数の関係者に任意で事情を聴いており、今後捜査が本格化していくとみられる。
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