赤穂民報
患者と家族の拠り所 月例の「がんサロン赤穂」(3月2日)
がん患者や家族が療養情報を共有したり、気持ちを分かち合ったりする場として月例の「がんサロン赤穂」が開設。毎月第2火曜日に穏やかな雰囲気の中、開かれている。
太子町を拠点に佐用町や上郡町など計5か所でがんサロンを開くがん患者会「はまなすの会」が昨年11月から始めた。がんの手術を経験した人や抗がん剤治療を受けている患者、家族をがんで亡くした人、あるいは医療従事者など、さまざまな立場や境遇の人が集う。参加者は話している人の言葉に静かに耳を傾け、プライバシーに関わる内容は他言しない。宗教への勧誘や健康食品などの物品購入を勧める行為は禁止。体調や都合で途中で入退室しても構わない。
「必ず何か話さないといけないということではありません。他の方の話を聴くだけでもいいんです」と語るのは同会代表の太田直美さん(62)=太子町=。すでに治療を経験した人のアドバイスが参考になったり、何度か参加して雰囲気に慣れるうちに悩み事や不安を打ち明ける人もあるという。実際に参加している女性は「今まで自分で抱えていたものを吐き出すことが出来た。地元の医療の状況について情報交換できるのも役立っている」と話す。
太田さんは元看護師で、自身も急性骨髄性白血病を患って2011年に骨髄移植を受けた経験を持つ。当時は神戸や明石まで行かないと患者会がなく、「患者が悩みを分かち合ったり、知識を得たりできる居場所が近くにあれば」と2017年に西播磨地域で初のがん患者会となる同会を立ち上げた。実家を改修して患者やボランティアたちが集まれる「はまなすの家」をオープン。抗がん剤治療で脱毛した頭皮を保護する「ケア帽子」の無料配布にも継続して取り組んでいる。
厚生労働省の統計(2019年)によれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性が65・5%、女性が51・2%。4人家族10組のうち9組以上で家族の誰かにがんが見つかる計算になる。ただし、がんが直接の死因となる確率は男性が25・1%、女性は17・5%にとどまる。新たな治療法や薬剤が開発されていることもあり、「がんになったら必ず死ぬ、という病気ではなくなってきています。がんとの向き合い方も『闘う』から『共に生きる』に変わりつつあります」(太田さん)。
「男性のおよそ3人に2人、女性の2人に1人はがんになる時代なのに、いまだに偏見を持っている人や『自分には関係ない』と思っている人も多い。そのために正しい情報を得られず、結果的に良い治療を受けられていないケースがあることがとても残念です」
がん対策基本法に基づく指針では、がん診療連携拠点病院は患者や家族などへの情報提供や相談に応じる「相談支援センター」を設置するように定められているが、がんの種別が限定されていたり、コロナ禍以降十分な活動ができていなかったりする病院もあり、患者や家族の拠り所となるサロンの意義は大きい。
次回は3月12日(火)午前10時から正午まで中広の赤穂市総合福祉会館で開く。参加無料で申し込み不要。患者とその家族だけでなく、がんについて正しい知識や情報を学びたいという人も参加できる。太田さんは「最近は『がんは誰にでもやってくる災害のようなもの』ととらえる『がん防災』の考え方が広まりつつあります。サロンで正しい情報や知識を身につけて、正しい治療へつなげてもらえれば」と呼び掛ける。
問い合わせは「はまなすの会」TEL079・277・2764。メール(hamanasunokai.s@outlook.jp)でも受け付ける。
(「がんサロン赤穂」を主催する、がん患者会「はまなすの会」の太田直美代表。左のマネキンに被せているのが「ケア帽子」)
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