赤穂民報

ワクチンCC不正疑惑 「作業実態ない事務局」賃料請求か(4月20日)

 赤穂市の新型コロナウイルスワクチン接種事業をめぐり、コールセンター(CC)の運用業務を受託していた旅行代理店「東武トップツアーズ姫路支店」が人件費や事務所賃料を不正に過大請求していたと昨年4月に内部告発された問題で、東武が作業実態のない「事務局」の賃料を赤穂市に請求していたことが市への取材でわかった。

 市は「請求根拠を欠く、または請求根拠に必要な契約上の承認手続きを経ていないものが含まれる」として業務委託料の一部返還を求めているが、同社は「適切に運営した」などとして返還に応じていない。

 赤穂市のワクチンCCは2021年3月から昨年12月まで姫路市白銀町の大手前通り沿いにあるオフィスビルの一室に開設。開設準備段階から終了まで同社が随意契約で事業を受注した。

 昨年4月、「同社が人件費や事務所賃料を不正に過大請求している」などとする通報が市に複数寄せられ、市が調査したところ、同社が受託した別の自治体のCCも同じ部屋で運営されており、両方に賃料を請求していたことが発覚した。市が「二重請求」を指摘したところ、「CCが手狭になったため、自社事務所の一角に設けた『事務局』の賃料も按分して請求した」などと釈明があったという。

 市が業務委託契約に際し同社に交付した仕様書ではCCの設置場所について「赤穂市の承諾を得た場所」との取り決めがあるが、同社が「自社事務所の一角に設けた」とする「事務局」については昨年4月11日に市が現地確認した際にも説明はなかったという。市は「事務局における作業実態が無い」と指摘。同社は「今後起こり得る事態に備えて(スペースを)確保」していたと正当性を主張したものの、1〜3月分の「事務局部分」の賃料の請求を取りやめ、4月末をもって「事務局を閉鎖」した。しかし、それ以前の賃料の返還には応じていない。

 告発者から寄せられた情報や赤穂市の調査によれば、CCの賃料以外にも(1)両市町のCC管理者を1人で掛け持ちしていたのに、管理者の日当をそれぞれの市町に請求していた(2)CC管理者がCCの業務時間内に旅行業の仕事をしていた(3)「課長級」を配置するとしていたCC管理者をグループ会社からの派遣社員がほぼ担っていた(4)CCの派遣スタッフは「午後5時45分」まで勤務することになっていたのに実際は午後5時15分で勤務終了し、0・5時間分多く人件費を請求していた―といった疑義がある。

 これらの疑義に対し、(1)赤穂市、播磨町共に、シフトで管理者を配置し、それぞれの管理・運用を行った(2)旅行業は、常に顧客から連絡がある。ただ、ワクチン事業業務を最優先に遂行していた(3)「課長級」は「マネジメントスキルを有すると判断した者」で運営した。管理者として十分な責務を果たしたと認識している(4)赤穂市との契約は、スタッフの就業時間に応じて計算された委託料が支払われるものではない―などと説明。事実と認めた一部を除き、疑義を否定している。

 市は昨年8月末、「国庫補助事業における補助対象経費として適正を欠く」などとして、CC賃料と派遣スタッフ人件費の返還を牟礼正稔市長名で要求。同社は百木田康二社長名で従来からの説明に沿った見解を回答した。

 市はその後も同社との協議を重ねたが両者の主張は「平行線」という。「市としては返還に値すべきものがあると認識している。告発から1年が経過し、これ以上引き延ばすことは適切でない。市長の判断を仰ぎ、対応していく」(松下直樹・健康福祉部長)と話している。

 新型コロナワクチンのCCをめぐっては、複数の自治体で業務委託費の不正・過大請求が発覚。東大阪市の事案ではオペレーターの人数を水増しして計約8億9000万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた旅行代理店の元支店長らに執行猶予付きの有罪判決が言い渡された。

 東武の赤穂市への回答内容について、告発者の一人は「CCの管理者は常に派遣社員1人で、赤穂市も播磨町も指揮していた。証拠となる報告書を改ざんしていた」などと改めて証言した。

(内部告発や赤穂市の調査で指摘されている疑義と東武トップツアーズの見解)

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