赤穂民報

市内洋食店の草分け、惜しまれつつ閉店(5月30日)

 「昔ながらの洋食屋さん」として根強い人気があった加里屋の「グリル泉(わく)」が5月22日で閉店した。
 同店は昭和44年に松本研二さんが夫婦で開業。当時の赤穂では洋食店は珍しく、ハンバーグやハヤシライスなど手間と時間を惜しまず仕込んだメニューが好評を博した。
 14年前に研二さんが他界してからは妻の松子さん(66)が店を切り盛り。レトロな雰囲気の店として新聞や雑誌の取材を受けることもあり、市外からの客も増えた。
 「主人の残した味を守りたい」
 キャベツやタマネギ、すじ肉などを1週間煮込んで作る特製デミグラスソースをはじめ、研二さんから教えられた調理手順は一切崩さなかった。そのため、朝の仕込みから閉店後の片付けまで毎日12時間の立ち仕事。夏場は40度以上にもなる厨房に立ち、身体への負担は年々重くなった。
 閉店を心に決めたのは22日朝。「1週間後とか、月末までにすると未練になるから」と仕入れ業者に電話をかけ、その日限りで店を閉めることを伝えた。
 静かに店を閉じるつもりだったが、話を伝え聞いたファンらが来店。閉店時間を過ぎても客が途絶えなかった。「長い間ありがとう」と泣く常連客もいて、松子さんも涙をためながらフライパンを振った。
 「昔と変わらない味やね、とお客さんから言ってもらえるのがうれしかった」と松子さん。最後の客を見送り、後片付けして自宅へ戻り、「これで終わりにします」と亡夫の遺影に手を合わせた。
 「主人は『やめるときはきっぱりと』と言っていましたから、わかってくれていると思う」。ただ一つ心残りなのは「お客さんにきちんとお礼を言えなかったこと」。
 「たくさんのみなさんにかわいがってもらえて…。100ぺんでも“ありがとう”と言いたい」と感謝を何度も口にした。

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