赤穂民報

【社説】非常時に生命守る設備と心の構えを(7月2日)

 大雨による洪水で被災し、建物は健全でも長時間停電するケース。豊岡市の災害拠点病院、公立豊岡病院は平成16年の台風23号で実際にそうした局面に遭遇した。10月20日午後8時20分ごろ、円山川からあふれた洪水で病院1階が床上浸水。電源設備が冠水し、非常用電源が作動した。
 当時、施設課係長だった広瀬富美夫さん(61)によると、非常用発電機は2階屋上よりも高い位置に4台を分散設置していたが1階にあった給油ポンプとタンクはすべて水没。燃料を確保するために職員をガソリンスタンドへ走らせ、道路が濁流に沈んでからは船で運んだ。通常電源が復旧した翌朝6時までの約9時間で燃料約500リットルを人の手で補給したという。
 豊岡市は赤穂市と同じく市街地の大部分が河川堤防より低い。平成16年災は排水機場の能力を超える大雨により堤防が決壊した。広瀬さんは「今思えば、ポンプを防水型にするとか、予備タンクのサイズを大きくしておけばよかったかも知れない」と振り返る。
 どこまで災害に備えるかは難しい課題だ。東日本大震災のように建物自体が津波で破壊されるような天災だと、非常用電源どころの話ではなくなる。しかし、豊岡の例のように非常用電源の有無が生死を分ける場合も現実にある。
 私たちにできることは、費用と効果を冷静に比較して可能な範囲で設備を整えておくこと。そして、完全には被害を防ぐことができない場合の「減災」について、あらかじめ手段と役割を考えておくことではないだろうか。
 「いくら設備を整えても、それがあてにできないこともある。そのとき、どう行動するかを心構えしておくことが一番大事かもしれない」(広瀬さん)。
 経験者の言葉だけに重い。貴重な教訓を活かすのも、私たちにできることの一つだ。

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