赤穂民報
【社説】赤穂から“世界一”のカキを(4月21日)
殻付き生カキの品評大会「かき日本一決定戦」で坂越のカキが総合4位に入賞した。創意工夫と努力を重ねてきた生産者に敬意を表すると同時に赤穂の特産品が品質、味ともに認められたことを喜びたい。
他の第一次産業と同じく後継者不足が課題のカキ養殖業界だが、世界に目を向けると市場拡大の大きなチャンスが期待されている。赤穂出身で世界かき学会会長の森勝義・東北大名誉教授は「急増する地球人口を支える食糧を陸地だけで確保するのは限界がある。栄養豊富で養殖可能なカキの需要は今後ますます高まる」と指摘。特に大量消費が見込める中国市場の拡大は確実で、輸出パフォーマンスを強めるフランス、豪州などに対抗しようと、韓国、ベトナムといったアジア諸国が政府支援の下に参入を目論んでいる。
海外で「カキの食べ方」といえば、生きたまま殻を開けて食卓に上げるのが圧倒的主流だという。そのため、世界のマーケットでは味と同じぐらい殻の形が良いことが重視され、そして何よりも「生きたまま消費者の口まで届くこと」が必須条件となる。むき身に加工した状態での流通が中心の日本は、生産量ではフランスの倍を水揚げるが、売上高は逆に半分しかない。
「かき日本一決定戦」は、世界で打ち勝てる国産カキを見出そうと、今年初めて開催された。「殻付き生カキ」に限定したのも、「味」「食感」だけでなく「デザイン」「流通方法」を審査項目に加えたのも、「海外で通用する評価基準」を見据えたため。そもそも、世界全体のカキ生産量416万トン(2008年)の少なくとも5割以上が、丈夫で質のよい日本(宮城産)の種カキの子孫とされる。大会実行委員長の佐藤言也氏=日本オイスター協会理事=は、「カキの輸出は、日本が世界を相手に勝負できる分野にもかかわらず未開拓。“黎明期”の今こそ、先んじるべき」と力説する。
姫路市は今年度、地元漁協と協力して「シングルシードオイスター」と呼ばれる養殖法の試験に乗り出す。粒子状に砕いたカキ殻に幼生を一つだけ付着させ、稚貝を網かごに入れて育てる手法。ホタテガイの貝殻に複数のカキを鈴なりに育てる従来法に比べ、丸みと厚みがあって身入りのよいカキを生育できるメリットがある。「かき日本一決定戦」の初代チャンピオンとなった長崎県小長井町漁協もこの方法を取り入れていた。姫路市水産漁港課によると、養殖場の網干地先は海域が小さく、生産量は赤穂の10分の1ほど。商品価値の高さで他産地との差別化を図るねらいだ。
前出の佐藤氏によれば、近い将来、カキの世界チャンピオンを決める「オイスター・ワールドカップ」の開催プランがあるという。赤穂から“世界一”を生み出す夢。生産者、漁協、行政が一致団結して技術研究と養殖環境の保護に取り組む価値があるのではないだろうか。
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