赤穂民報

鮮魚届けて65年、市内最年長の行商人(6月22日)

 「オーシっ。オーシっ」。坂越の路地に客引きの野太い声が響く。声の主は松下恒夫さん(85)。赤穂市内で現役最年長の鮮魚行商人だ。
 毎朝5時に起き、軽トラックで中広の市場へ。水揚げされたばかりのメバル、カレイなどを仕入れる。8〜10カ所ある販売場所に着くたびに「オーシっ。オーシっ」。かつて5人いた坂越の魚売りに共通の掛け声だが、今では松下さんだけになった。
 声を耳にした客がポツポツ寄り集まる。魚の目方を量るのは、今では珍しくなった鉤秤。荷台の上のまな板でうろこと内臓を手際よく取り除く。「昔はお客さんが多かってな。夕方までかかって売ったもんや」。
 松下さんは20歳のころ、父・長一さんが営む「戎や」で鮮魚販売の仕事を手伝い始めた。辞めたいと思ったことはこれまで一度もなかったが、最近はトロ箱を積み降ろすたびに両ひざが痛み、「そろそろ潮時やろか」と妻の芽野利さん(83)に漏らすようになった。
 常連客の多くは車を持たない高齢者。「松下さんが来てくれんようになったら、お魚食べられん」と嘆く。松下さんは「続けたいけれど体がエラい。6月いっぱいまでは何とか頑張る」と話している。

(赤穂市内で現役最年長の鮮魚行商人、松下恒夫さん)

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