赤穂民報
関福大・加藤明先生の「応援します!かしこい子育て・教育・介護」【第8回】(5月2日)
【どうして勉強しなければいけないの】
子どもに、こう聞かれたことはありませんか。聞かないまでも、このような疑問をもっている子どもは、少なくありません。私も疑問でしたが、聞きませんでした。いや、「当たり前でしょう」って叱られそうで、聞けませんでした。
どうして勉強しなければいけないのか。面と向かってこう聞かれたら、どう答えますか。
「大きくなったら困るから」
こう答えていませんか。実は、これが正解なのです。勉強していないと大人になったら困るのです。江戸時代の町民は、寺子屋で「読み・書き・算」、それに簡単な修身(道徳)を学んでいました。武士は藩校で、それに加えて論語を始めとする四書五経などを学び、武芸にも励んでいました。町民は、読み・書き・算ができないと暮らしていけないからであり、武士も教養がないと一人前と認められないからです。
それでは現代の子どもたちには、どのような勉強が必要でしょうか。読み・書き・算の基礎的、基本的な知識・技能(分かる、覚える・できる)だけでなく、それらを支えるものの見方や考え方、思考力、判断力、表現力も必要でしょう。
さらに、グローバル化社会を生き抜いていくためには自国や自分の地域の文化、歴史の理解と誇り、他国や異文化に対する共感と尊敬、それにコミュニケーション力やコラボレーション力(協働力)もつけてやらねばなりません。それらを根底から支える基盤は、人類が築いてきた文化を教養として身に付け、それらを享受し、つまり、楽しみながら自分らしく生きていく力です。
学校教育からみれば、子どもたちは社会に出る前に学校で学ばなければならないことがあり、教えなければならないことがあるのです。それは計算や漢字だけではありません。平和や誠実、公共心、公徳心等々の精神的な価値だってそうです。さらに、例えば選挙についてもです。なぜ20歳になったら選挙権があるのか。いつ頃から20歳の男女すべてが選挙できるようになったのか。そして、この1票によって、どのように世の中が変わるのか。
これまでの人々が発展させてきた文化、文化財のバトンを受け取り、一歩でも進めて次にバトンタッチをする。文化の伝達、習得にとどまらず、創造までの力をつけてやらねばならないのです。(関西福祉大学・学長)
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