赤穂民報

関福大・加藤明先生の「応援します!かしこい子育て・教育・介護」【第9回】(5月16日)

【さまざまの事おもひ出す桜かな(芭蕉)】
 桜の花は散りましたが、緑の葉っぱに赤い実ができています。サクラの実のさくらんぼです。
 「あれっ、赤い実ができてるよ」
 「さくらんぼみたい。食べられるかな。レストランのよりも、ちょっと小さいみたい」
 散歩で、こんな会話をしてみてください。そして家に帰ってから一緒に調べてみるのです。確かにさくらんぼですが、甘さや大きさでレストランのものにはかないません。あちらは、セイヨウミザクラの実が多いのです。
 このように知的な好奇心をふくらませ、調べて見て知らなかったことが分かったといった手応えが大切なのです。百聞は一見に如かずといいますが、百聞があるから一見が生き、一見があるから百聞と結び付いて確かな知識が増えるのです。そのためには、まわりの大人も子どもに負けないように知的好奇心をもち、ともに調べ、感動することが大切です。
 桜は散ってしまいましたが、今年の桜をどのような思いで見られましたか。4年前からは東日本大震災で被災した人々を思いながら、早く元通りの生活ができますようにと祈りながら見るようになりました。
 いにしえには、「願わくは 花の下にて 春死なん」と歌った人もいれば、「朝日に におう山桜花」に純粋無垢な大和心を見た人もいます。赤穂駅には「風さそふ 花よりもなお 我はまた 春の名残を いかにとやせん」の内匠頭の辞世の句があります。
 次々に咲いて北上する桜前線の知らせに、桜の花が咲くそれぞれのふるさとが集まり、それが日本の国土になっているんだと改めて感じさせられたり、その裏に一年のうちの数日の開花のために桜を大切に育てている桜守の存在を思い「おかげさま」のことばを噛みしめたりする。このようなことを知って、味わい深く毎日を暮らす。なぜ勉強しなければならないかの答えの一つがここにあるのです。(関西福祉大学・学長)

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