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任期終えてセネガルから帰国

 2016年11月12日 
任地で出会った人たちとの記念写真。中央が前田さん
 独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として西アフリカのセネガル共和国に2年間赴任し、コラム「チコのセネガル通信」を本紙に寄稿した坂越出身の前田智帆(ちほ)さん(24)が任期を終えて帰国。活動を振り返ってもらった。
 * * *
−2年間おつかれさまでした。生ゴミ堆肥化や小学校のトイレ設置、かまどの作り方講習、米作りの普及など多くのプロジェクトに取り組みましたね
 「うまくいったものもあれば、うまくいかなかったものもあります。余り布でアクセサリーを作って女性たちの収入増につなげる取り組みは、女の子たちが途中から来なくなっちゃって。売れなくてモチベーションが下がってしまったようでした。作り方だけ教えて、売り方を教えなかったのが失敗でした」
−活動していて一番うれしかったことを教えてください
 「稲作研修会を受講した人から『お米を自分たちで栽培できるきっかけをもらえた』と言ってもらえたときです。役に立てたのかなと実感できた瞬間でした。ちょうどセネガルを離れるときに稲穂がつき始めて。もう今ごろは収穫が済んだころだと思います」
−一番苦労したことは何ですか
 「やはり言葉です。フランス語と現地語のウォルフ語を混ぜて話してたんですけど、かみ合わなくて。でも、現地に入って半年後くらいで、私のしゃべるウォルフ語を理解してくれる人が増えてきて、それからは楽しく過ごせるようになりました。帰国するまでにはウォルフ語で口喧嘩できるくらいになりました(笑)」
−どんなことで喧嘩したのですか
 「あんまり私に頼りっきりなので、『なんで自分たちでやらないの?』って。本気で喧嘩したけど、その分、仲良くなれました。その後は自分たちから『こういうことをやってみたい』とか言ってくれるようになって」
−その他に困ったことは
 「約束をよくすっぽかされたことですかね。セネガルでは『ノー』と言うことがあまり良くないとされる文化があるんです。なので、何か約束したときに、その日用事があるとわかっていても、とりあえず『インシャラー(神様が望むなら)』と答えるんですね。それで、約束の時間になっても来てくれない。最初の方はそれでいらいらしてましたけど、『仕方ないな』と思えるようになって。そのうち、『インシャラー』の言い方で、その人が本当に来るつもりなのか、そうでないのか分かるようになりました。こうしたことは研修でも教わったんですけど、実際に体験しないとわからないです」
−治安は大丈夫でしたか
 「首都のダカールなど都会はスリが多くて物騒ですが、私の任地のンドファンは夜に一人で出歩いても大丈夫なくらいで安全でした。たまに強盗でもあったら街の大ニュースです。『あそこの家の牛が盗られた』って」
−テロの心配はなかったですか
 「注意喚起は毎週大使館から送られてきました。『外国人が集まる場所には金曜日の夜には絶対に行かないでください』という内容です。バングラデシュであったテロがそうだったように、金曜の夜にテロが起こりやすいとされていたからです。特に首都に行ったときは気を付けました」
−やり残したことは
 「もっと日本の文化を紹介する活動をやっておけばよかった。この夏に『日本祭り』を開いたんですけど、集客がうまくいかなくて。一年目にもやっておいたらよかったなとちょっと後悔しています」
−任地のンドファン市では、前田さんが初めてJICAから派遣された隊員でした
 「人間関係がまったくないところからのスタートでしたので、それが大変でした。なので、引き継ぎ資料には私がお世話になった信頼できる人たちの名前と連絡先、得意分野をしっかり書いておきました。もし、後任の隊員から要望があれば、詳しく説明するつもりです」
−セネガルにはどのような可能性があると思いますか
 「たくさんあると思いますが、活動を通して感じたのは、農業振興や観光面での可能性です。例えば、ンドファンには『デンブ』という木の実があるんですが、とっても甘くておいしくて栄養価も高い。そこら中に自生してて季節になったら熟れてボトボト地面に落ちてる。ジャムにして首都で売ればけっこういけるんじゃないかと思いました。リゾート地は気候も過ごしやすく、ごはんもおいしいし、人もとても優しい素敵な国なので観光面でもチャンスがあると思います」
−前田さん自身は今後、どのようにセネガルに関わりたいですか
 「行く前は『助けてあげたい』という思いが強かったんですけど、2年間過ごしてみて、『一緒にやりたい』っていう気持ちに変わりました。彼らはモチベーションもあって、眠っている材料もたくさんある。一緒にやっていくことで、私もそこで活きる、楽しめると思う」
−ということは、またセネガルに行くのですか
 「いろんなことに挑戦できて十分満足な2年間でしたが、農業支援・農作物加工・女性支援など、まだまだやりたいことがあるので。日本で、ものづくりのスキルを身に付けてから戻りたいと思っています」
 * * *
 ▽前田智帆さん=津田塾大学で国際協力活動への関心を高め、卒業後に青年海外協力隊員を志願。学生時代に海外インターンシップで滞在したセネガルへ平成26年9月から2年間赴任した。「チコ」は現地での愛称。
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掲載紙面(PDF):
2016年11月12日(2206号) 4面 (12,474,401byte)
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