明治大正期の町家 古民家ホテルに再生
2019年05月25日
古民家を改修再生した「加里屋旅館Q」のロビー=三晃商事提供
かつて呉服屋だった木造瓦葺き2階建て。2年前から空き家になっていたが、御崎で温泉旅館「潮彩きらら祥吉」を運営する三晃商事が「宿泊施設として再生したい」と、伝統的建造物の保全に取り組むNPO「まちなみ活用支援ネット」(たつの市、酒井宏一理事長)に委託。宮大工の手で耐震化と屋根の葺き替え、内装工事などを施した。
「できるだけ元の雰囲気を残そう」と従来の部材をそのまま活かした柱や天井からは落ち着いたたたずまいが感じられる。5室ある客室は外国人客にも快適に宿泊してもらおうと、全室にシャワー付きの風呂とベッドを設置した。2階建ての離れを改修したメゾネットタイプの客室は1階に坪庭付きの半露天風呂があり、2階の寝室からは中庭越しに花岳寺の境内を眺めることができる。
名称は「加里屋旅館Q」。アルファベットの「Q」はクオリティ(品質)、クエスト(探求)、クワイエット(静寂)などの単語のイニシャルで「目指す方向性を表した」(吉井祥二常務)という。1泊朝食付き(税別9000円〜)で予約受付中(Tel56・5488)。希望があれば夕食(同6000円)も提供するが、基本は周辺の飲食店を紹介するスタイル。「旅館を拠点に食べ歩きや街巡りを楽しみ、城下町の風情を感じてもらえれば」と話す。通りに面したレストランスペースは当面は宿泊客専用だが、将来的にはオープンカフェとして営業する予定という。
花岳寺の周辺は藩主が通った「お成り道」や旧街道の「備前街道」があり、古い町家が点在する。2年前に隣接する古民家の改修も手掛けた酒井理事長は「伝統的建造物がある町並みは『忠臣蔵のふるさと』のイメージにふさわしい」とし、「修繕が難しそうに見える古民家でも、やり方次第で新築ほどお金をかけずに再生できる。解体撤去ではなく、活用しながら保全する選択肢を検討してほしい」と話す。
<前の記事 |
掲載紙面(PDF):
2019年5月25日号(2326号) 1面 (11,961,567byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
コメントを書く