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関福大リレーコラム・幼児期こそ漢字

 2022年10月29日 
 『論語と算盤』を76歳で刊行した渋沢栄一は、その中で習慣について、次のように述べています。


 『良い習慣は子供時代が肝心。私は少年時代に読んだ経書(古典)も歴史書もよく憶えている。若い頭脳で覚えたことはいつまでも頭に残るように、幼い頃から青年期にかけては習慣が身に付きやすい。』

 これは、現在の読書についても同じことが言えます。特に大人は、古典を読むとき、一言一句丁寧に読み、分かりづらいからこそ、その先を想像し「今の社会で〇〇かな…?」と、自分の経験値をもとに、想定したり創造したりなど、まず考えることを優先にしがちです。

 しかし、子供はそんなことは考えません。特に文字をそのまま声に出して読む「素読」をさせることにより、脳の発達に大きな影響を与えます。最近の脳科学では、言語を扱う脳の前頭前野は3歳までに急激に発達するといわれています。そして、語彙力などを司る側頭葉や頭頂葉などの神経細胞は、その後も成長を続けます。3、4歳で、たくさんの漢字を遊びながら覚えるのは、脳の発達過程にきわめて合致しています。

 「素読」は、文字をそのまま声に出して読むことで「音読」とは違います。「素読」は、ひらがなだけでなく漢字を読むことも含み、言葉の響きとリズムを繰り返すことで得られる効果があります。「素読」に適した『論語』は、日ごろ自分が使っている言葉や日常会話とは違う心の言葉であり、幼い頃に自然と身につく学習効果があります。「素読」を3歳ころから15歳くらいまで行うことで、「感性が磨かれる。文字や文章が自然と入る。学習への導入がよくなる。記憶力が上がる。文章への感覚が磨かれる」のです。

 漢字教育の石井薫博士は、幼児期の言葉の学習は、漢字とかな交じりにより、『思考力・読解力・表現力が身に付き、将来社会で活躍できるもの』と提唱しました。漢字を読むことにより、言葉が豊かになり、素直で品格が身に付き礼儀正しい子供が育つのです。特に幼児期だからこそ、漢字が大切なのです。(尼子尚公・教職センター教授)
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掲載紙面(PDF):
2022年10月29日号(2481号) 3面 (7,751,332byte)
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