情報公開請求を放置、書類紛失
2012年01月28日
入院先の赤穂市民病院で死亡した相生市内の70代女性の遺族が、赤穂市長宛てに申請した情報公開請求と異議申し立てを、病院側が意図的に「保留」し、必要な手続きをしないまま9カ月以上にわたって放置していたことがわかった。
赤穂市行政手続条例では、遅滞のない審査開始を義務付けており、病院の対応は条例抵触の恐れがある。しかも、手続きを放置しているうちに、それら申請書類の一部を「紛失」していたことも発覚。遺族は「対応も、文書管理も、あまりにひどすぎる。何人にも認められた情報公開請求権の行使をも妨げる病院側の対応に強い憤りを覚える」と厳しく非難している。
遺族の話では、平成22年1月、女性が入院先の赤穂市民病院で死亡。女性に対する診療行為に疑問を感じた長男(47)ら遺族は、カルテや医療マニュアルなど計約30件の開示を翌月から12月にかけて段階的に求めた。
病院側は6月中旬までに出された10数件の請求に対しては、条例に従って申請受理の翌日から15日以内に開示の可否を通知し、遺族側も費用(コピー代、郵送料)を納付して写しの交付を受けていた。しかし、7月8―15日付けで通知された開示決定6件については内容に納得できなかったことから、遺族は異議申し立てを検討。それと並行して、同月30日に新たに3件の情報公開請求を行った。すると、その日に病院総務課長と長男が電話で話した際、同課長が「あなたが義務を果たさないから、こちらも義務を果たす必要はない」と、遺族側が費用を納めていないことなどを理由に、新たな申請を「保留」する旨を一方的に通告してきたという。
病院側の対応を不服とした長男は、異議申し立てを行ったが、それも、「同じ理由で止めている」(同課長)と相手にされなかった。長男は昨年8月、「法的手段を辞さない」などとする市長宛ての抗議文を内容証明郵便で送付。すると翌月、「保留」とされていた請求について開示決定通知書が届いた。遺族側は通知に基づいて費用を納め、ようやく希望の文書を入手できた。
ところが、一部の異議申し立て、情報公開請求について引き続き応答がないものがあり、遺族からの相談を受けた本紙が関係者を取材。それらの申請書類を市側が紛失していたことが明るみになった。行方がわからなくなっている文書は、22年8月から10月ごろにかけて秘書広報課がファクス受信したもの。同課は本紙の取材に「内容が市民病院に関係していたので、伝送便で病院へ渡した」と受信していたことを認めた。遺族の記録によれば、紛失文書は全部で15通に上るとみられる。
一連のトラブルについて、病院総務課長は「開示決定した文書を、すでにコピーしていたのに、費用の納付がなかったので、弁護士と協議の上、『保留』とした」とし、書類の紛失については「そうしたファクスが届いたとの相談は秘書広報課からあったが、文書は受け取っていない」と言い張った。
赤穂市情報公開請求条例施行規則では、開示費用の納付時期について、「写しの交付を受けるときまで」と規定。病院から送られた開示決定通知書には納付期限の記載はなかった。本紙が他自治体に見解を尋ねたところ、「開示決定したからといって、納付義務が発生するものではない」(相生市)「コピーも郵送も、費用が納付されてから取りかかる」(兵庫県)「仮に納付前にコピーしたとしても、それは行政側の都合ですることだから、申請者に納付を求めることはありえない」(姫路市)とのスタンス。赤穂市の総務課も「条例上から言えば、料金未納をもって保留とするのは疑義が生じるのではないか」と首をかしげた。
また、市行政手続条例7条は、何らかの申請があった場合の選択肢として行政手続法と同じく、▽審査開始▽補正要求▽拒否―のいずれかしか規定していない。総務省の行政手続・制度調査室は「市条例に対してコメントする立場にないが、行政手続法の解釈としては、いかなる場合も『保留』とすることはできない」と明言した。
なお、同室によると、異議申立書には押印が必要で、ファクスで提出した場合は捺印が確認できないことから「不適法」とみなされるという。しかし、そうした場合でも「行政庁には補正命令を出す義務があり、そのまま放置や却下をすれば法令違反になる」との見解だった。
豆田正明市長は26日、「請求を保留したことについては、粛々と事務を進めた過程の中で行われたものであり、不適切とは考えていない。その他については承知していないので答えられない」との談話を、秘書広報課を通じて出した。
掲載紙面(PDF):
2012年1月28日(1977号) 1面 (11,180,080byte)
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赤穂市行政手続条例では、遅滞のない審査開始を義務付けており、病院の対応は条例抵触の恐れがある。しかも、手続きを放置しているうちに、それら申請書類の一部を「紛失」していたことも発覚。遺族は「対応も、文書管理も、あまりにひどすぎる。何人にも認められた情報公開請求権の行使をも妨げる病院側の対応に強い憤りを覚える」と厳しく非難している。
遺族の話では、平成22年1月、女性が入院先の赤穂市民病院で死亡。女性に対する診療行為に疑問を感じた長男(47)ら遺族は、カルテや医療マニュアルなど計約30件の開示を翌月から12月にかけて段階的に求めた。
病院側は6月中旬までに出された10数件の請求に対しては、条例に従って申請受理の翌日から15日以内に開示の可否を通知し、遺族側も費用(コピー代、郵送料)を納付して写しの交付を受けていた。しかし、7月8―15日付けで通知された開示決定6件については内容に納得できなかったことから、遺族は異議申し立てを検討。それと並行して、同月30日に新たに3件の情報公開請求を行った。すると、その日に病院総務課長と長男が電話で話した際、同課長が「あなたが義務を果たさないから、こちらも義務を果たす必要はない」と、遺族側が費用を納めていないことなどを理由に、新たな申請を「保留」する旨を一方的に通告してきたという。
病院側の対応を不服とした長男は、異議申し立てを行ったが、それも、「同じ理由で止めている」(同課長)と相手にされなかった。長男は昨年8月、「法的手段を辞さない」などとする市長宛ての抗議文を内容証明郵便で送付。すると翌月、「保留」とされていた請求について開示決定通知書が届いた。遺族側は通知に基づいて費用を納め、ようやく希望の文書を入手できた。
ところが、一部の異議申し立て、情報公開請求について引き続き応答がないものがあり、遺族からの相談を受けた本紙が関係者を取材。それらの申請書類を市側が紛失していたことが明るみになった。行方がわからなくなっている文書は、22年8月から10月ごろにかけて秘書広報課がファクス受信したもの。同課は本紙の取材に「内容が市民病院に関係していたので、伝送便で病院へ渡した」と受信していたことを認めた。遺族の記録によれば、紛失文書は全部で15通に上るとみられる。
一連のトラブルについて、病院総務課長は「開示決定した文書を、すでにコピーしていたのに、費用の納付がなかったので、弁護士と協議の上、『保留』とした」とし、書類の紛失については「そうしたファクスが届いたとの相談は秘書広報課からあったが、文書は受け取っていない」と言い張った。
赤穂市情報公開請求条例施行規則では、開示費用の納付時期について、「写しの交付を受けるときまで」と規定。病院から送られた開示決定通知書には納付期限の記載はなかった。本紙が他自治体に見解を尋ねたところ、「開示決定したからといって、納付義務が発生するものではない」(相生市)「コピーも郵送も、費用が納付されてから取りかかる」(兵庫県)「仮に納付前にコピーしたとしても、それは行政側の都合ですることだから、申請者に納付を求めることはありえない」(姫路市)とのスタンス。赤穂市の総務課も「条例上から言えば、料金未納をもって保留とするのは疑義が生じるのではないか」と首をかしげた。
また、市行政手続条例7条は、何らかの申請があった場合の選択肢として行政手続法と同じく、▽審査開始▽補正要求▽拒否―のいずれかしか規定していない。総務省の行政手続・制度調査室は「市条例に対してコメントする立場にないが、行政手続法の解釈としては、いかなる場合も『保留』とすることはできない」と明言した。
なお、同室によると、異議申立書には押印が必要で、ファクスで提出した場合は捺印が確認できないことから「不適法」とみなされるという。しかし、そうした場合でも「行政庁には補正命令を出す義務があり、そのまま放置や却下をすれば法令違反になる」との見解だった。
豆田正明市長は26日、「請求を保留したことについては、粛々と事務を進めた過程の中で行われたものであり、不適切とは考えていない。その他については承知していないので答えられない」との談話を、秘書広報課を通じて出した。
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コメント
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投稿:さらにどうなんでしょう? 2012年02月03日私立の病院で、こんな要求があれば遺族に情報を開示するのかしら?
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投稿:どうなんでしょう 2012年02月03日総務省調査室では「不適法」なのに赤穂市では「不適切ではない」
赤穂市は、赤穂市だけの法があるのか・・・知らなかった。
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投稿:たしかに・・(-_-;) 2012年02月02日法令違反も粛々と事務を進めた過程の中で行われれば、適切になるって言う話でOK?
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投稿:((( ;゚Д゚))) 2012年02月02日コメントを書く