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高野の前田幸雄さん、国画会の会員に

2015年06月06日

  • 国画会の会員に推薦された前田幸雄さん

    国画会の会員に推薦された前田幸雄さん

  • ネパールで出会った僧侶を写した今回の出品作「生きる」

    ネパールで出会った僧侶を写した今回の出品作「生きる」

 国内有数の美術団体・国画会主催の第89回国展で、高野の前田幸雄さん(65)が写真部会員に推薦された。モノクロだからこそ可能な表現を追い求め、白黒フィルムでの撮影にこだわる前田さん。「これまで通り、自分の気持ちがこもった写真を撮りたい」と思いを語った。
 大正7年創立の日本画団体「国画創作協会」を前身とする同会は昭和22年に写真部が発足。現在は絵画、版画、彫刻、工芸と合わせて5部門がある。前田さんは平成9年から18年まで10年連続入選して準会員になり、昨年には準会員優作賞に輝いた。
 惣門町で写真スタジオを経営。「自分から写真を取ったらなんにも残らない」と冗談っぽく笑う。「今までの経験やプロセスを大事にしたいから」と作品撮影にはフィルムカメラしか使わず、現像液は薬剤を自家調合するなど譲れない頑固さがある。
 長年モチーフとしているのがネパールの人物写真。平成6年に初めて渡航して以来、「昔の日本のような謙虚でやさしいお国柄にひかれて」毎年のように5〜10日間、首都のカトマンズに滞在し、そこで暮らす人たちの日常にレンズを向けてきた。今年3月の大地震後には、すぐに現地へ電話をかけて友人たちの安否を確認した。知り合いに犠牲者はなかったが、見覚えのある寺院が倒壊している映像をニュースで目にし、心を痛めた。
 前田さんは人物を撮影する際、演出やポーズを頼むことは一切しない。あくまでも自然体の表情や仕草だけを狙う。「モノクロ写真は歳月が経っても画質が劣化しない。50年後、100年後にも写真の中で被写体が『生きている』作品を撮るのが夢」と話している。
 前田さんの今年の出品作「生きる」は6月9日(火)から14日(日)まで大阪市天王寺区の大阪市立美術館で展示される。


文化・歴史 ]

掲載紙面(PDF):

2015年6月6日(2138号)1面 (13,655,056byte)


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