2015年10月10日
ジャパンアートマイルを立ち上げて10周年を迎えた塩飽隆子さん・康正さん夫妻
日本と海外の子どもたちが大型絵画の共同制作を通して学び合う活動を支援する「ジャパンアートマイル実行委員会(JAM)」(塩飽隆子代表)が創設10周年を迎えた。
塩飽さんが大町の自宅に事務局を構え、夫の康正さん(66)と二人三脚で育んできたプロジェクト。5年後の2020年には東京五輪に合わせて作品を展示する「オリンピック展」の開催を決定しており、今月24日に東京で記念フォーラムを開く。
「アートマイルプロジェクト」は世界平和をテーマに縦1・5メートル、横3・6メートルの壁画を描いて展示する取り組みとして1997年にアメリカで始まった。理念に共鳴した塩飽さんは英語教室を経営するかたわら運営に参画。日本と海外の学校がテーマをもって一枚の作品を共同制作する国際協働学習プログラムへと進化させた。
参加校はまずパートナー校と自己紹介。設定した学習テーマについてお互いに調べる。調べた結果を情報共有した上で、その成果として絵画制作に取りかかる。絵の内容や構図を相談して役割分担。半分ずつ描いて完成させた作品を鑑賞し、活動全体を振り返る。
一連のやり取りは主にインターネット上のフォーラムとテレビ会議システムを用いる。コミュニケーション言語は英語。合意へたどり着くのに苦労したり、文化や価値観の違いにショックを受けたりすることもあるが、「そうした経験こそが、世界の同世代と協働してものを生み出す力につながる」と塩飽さんは強調する。
JAMは国内外の学校から届くエントリーを取りまとめ、各校の希望や規模に応じてパートナー校をマッチング。交流が円滑に進むように側面からフォローする。平成17年10月の設立当初はプロジェクトの周知に苦労したが、実際に参加した学校の教職員から徐々に口コミで拡大。平成22年に文科省、同24年に外務省の後援事業となり、昨年にはユネスコの奨励プロジェクトに位置付けられた。
これまでに小・中・高校を中心に1001校3万3877人が参加(今年6月時点)。五大陸すべての61の国・地域に及ぶ。日本の参加者の中にはアートマイルの経験をきっかけに将来の目標を定めて海外留学した生徒もある。
記念フォーラムは国立オリンピック記念青少年総合センターで開催。塩飽さんが「アートマイルの10年の歩み」と題して活動を振り返るほか、参加教員と生徒が事例報告する。また、文部科学大臣補佐官の鈴木寛氏、外務省大臣官房参事官の三上正裕氏らを招いたパネルディスカッションで将来展望を話し合う。
紛争や環境問題、経済格差など国際間で解決しなければならない課題がますます増える中、「世界の人々と協働して未来を切り拓いていく力が次世代に求められる」と塩飽さん。「10年間続けてきて、『21世紀を生き抜く力』を育む上でアートマイルが有効だという確信が持てました。オリンピック展の成功へ向けて、もうひと頑張りします」と話している。
[ 文化・歴史 ]
掲載紙面(PDF):
2015年10月10日・第1部(2156号)1面 (11,394,584byte)
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