2015年12月19日
【考える力を付けるには、書くことがいちばん】
私の講演をいちばん前で聴いて、いちばんたくさんメモを取るのは門川大作さんでした。当時は京都市の教育長で、今は京都市の市長をされています。教育長が一心にメモを取るので、まわりの指導主事の先生方もメモを取らないわけにはいきません。庁舎に帰ってからは、今日の講演について大切なところと自分なりのコメントを述べさせ、議論になることもあったと聞いています。
ここから学ぶことはたくさんあります。まずメモを取ること、聞くだけではなく聞き取って書くこと、これは思考活動を活性化するためにたいへん効果的なことです。耳と頭と手を同時に働かせるからです。聞くだけでは、印象的なこと以外は忘れてしまいます。キーワードをメモするだけで、そこから復元できます。それだけでなく、メモを取ることそのものが思考活動を活性化しているのです。次に、どんどん書くという活動のお手本をリーダーが示し、それに基づいてコミュニケーションを行い、聞き取り方を振り返り、その改善を図っていることです。
このように書くことや、発表することをもっと取り入れて授業を活性化し、学習課題を自分のものとして取り組ませて、思考力やその他の能力を付けさせることが、今学校教育では「アクティブ・ラーニング」のスローガンのもとに強調されています。
私は執筆に行き詰まったとき、時々ノートをもって近くの喫茶店に行きます。コーヒーを飲むだけなら職場でもいいのですが、場所を変え頭を冷やして構想を練り直すのです。
ちょうど電車に乗って日常をしばし離れての、自分を見つめ直す小旅行と同じです。「忙中閑あり」の閑を創るわけです。日常の難題に当たったときも、そうやって解決策を探っています。
先生方には「黒板を写すだけの清書から脱却し、考えるための道具、メモや構想を練るための道具としてノートを活用することを子ども達に教えてください」とお願いしています。そういえば試験の時に答案用紙の裏や隅にちょこちょこと書いて考えたことがあったでしょう。そのためにノートを使うのです。時々ノートを見開きで使い、上下に分けて、上半分は黒板を写し、下半分はマイノートとして自分の考えをまとめたり、友達の発表をメモしたり、黒板には書かれなかったけれども大切だと思うことをどんどん書かせるのです。これならノートを見るだけで、学校での学習の内容や子どもの学習ぶりが一目瞭然に分かります。このようなノート指導によって、考える力と自分ごととして学習に取り組む態度を育てたいと願っています。
さて来年からは、哲学カフェのマスターの中村剛(社会福祉学部)、前川泰子(看護学部)、市橋真奈美、金沢緑(発達教育学部)の先生と私の5人でこのコーナーを担当します。ご期待ください。実は、私もひそかに楽しみにしています。(関西福祉大学・学長)
[ かしこい子育て ]
掲載紙面(PDF):
2015年12月19日(2166号)3面 (11,978,716byte)
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