2019年06月08日
『ホタル10年の調査報告書』をまとめた高雄小学校学習ボランティアグループのみなさん
高雄地区でホタルの繁殖を目指して生息分布調査を続けている高雄小学校学習ボランティアグループが10年間に及ぶ調査結果を報告書にまとめた。
一般的にホタルの生息が困難とされる川幅の広い場所や街灯がある場所でも条件次第で生息でき、また、河川工事の後に個体数が減少する傾向がみられたという。同グループは「今後の参考なれば」としている。
地元住民有志の同グループによると、高雄地区では昭和20年代には集落の水路のいたるところで飛び交うホタルを見ることができたが、農地の近代化が進むにつれて激減したという。
調査は、ホタルの目撃情報が寄せられた黒谷川上流や高雄川など4か所で2009年にスタート。ホタルが出現する5月下旬から6月中旬まで雨天を除いて毎晩8時ごろ、メンバーが手分けして調査地点を目視し、確認できたホタルの光跡を数えた。その後、千種川で新たにホタルが見つかった高雄橋下流、繁殖幼虫を放流した小学校近くの河川敷も調査箇所に加えた。昨年で10年の節目になったことから、これまでの調査結果に考察を加えて冊子にまとめた。
報告書によると、6地点とも出現のピークは例年6月初旬で、黒谷川上流では2016年に一日最多の80匹を確認した。千種川本流沿いの調査地点では、川幅が広く、付近に街灯が設置されているという環境にもかかわらず、細々と生息が継続。その理由として、▽水の流れが穏やかな箇所がある▽ホタルが生息している場所には光が届かない地形になっている、と推察した。
一方、高雄川では2012年、千種川の高雄橋下流では2016年を最後にホタルの姿が見られなくなった。いずれの地点もその直後に河川工事が行われており、影響が考えられるという。
採集した成虫から産卵させて孵化した幼虫を放流するまでの約9か月に及ぶ飼育記録も収録し、A4判46ページ。50部印刷して市内の小学校のほか、河川を管理する行政機関にも提出した。
「ホタルの生息に河川環境が深く関わっていることが改めてわかった。可能な限り、保全に努めるべきと思う」とグループ代表の尼子公一さん(74)。今後も調査を継続し、さらにデータを蓄積するという。
[ 社会 ]
掲載紙面(PDF):
2019年6月8日号(2328号)1面 (9,171,964byte)
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