2021年08月28日
先日までのオリンピックでの各国の選手達の競技は、見ている私たちにたくさんの感動を与えてくれました。そのなかで私はあらためて大切さを認識させられたことが、3つあります。
一つ目は、粘り強くがんばることの大切さです。がむしゃらにがんばるのではなく、成果を確かめながら軌道を修正し、賢く、粘り強くがんばること。1年間の開会延期でのコンディションの維持とベストコンディションで競技当日を迎えるためには、ぜひとも必要なことでした。
実は子ども達の通知表の観点にも、このような振り返りによって賢く、粘り強く取り組むことが含まれています。勉強の取り組み方や生活習慣のあり方など、子どもと一緒に成果を振り返りながら、賢く、粘り強く、長続きのする、その子に合った取り組み方と振り返り方を身に付けさせることがこれからの人生を歩むにあたって大切なことです。
二つ目は、あきらめずに気持ちを切り替え、今やるべきことに集中することの大切さです。
決勝戦で敗れた者どうしの銅メダルをかけた戦いは、決勝戦に負けず劣らず見応えがありました。勝負の運不運は人知を越えた神のなせる技、結果を受け止め、その上で、今ここでやらねばならないことに集中する。一流と言われる人は、この気持ちの切り替えも一流です。試合後の戦った者同士のお互いを讃え合う姿の清々しさは、私たちの気持ちも晴れ晴れとしてくれました。
大リーグで活躍していた日本人投手は、味方の守備のミスでピンチに陥ったとき「しゃあないなあ」の一言で気持ちを切り替え、次の打者に全力で投球したとのこと。過ぎたことを引きずり、いつまでも背負っていないで、今やらねばならないことに集中、熱中、没頭すること。結果は「なるようにしかならない」のではなく、「なるようになる」ものです。
三つ目は、相手に対してリスペクト(尊敬)の気持ちをもつこと。そして、自分に対してはプライド(誇り)をもつことの大切さです。尊敬と誇りは、心の通い合いだけでなく、相まって互いの能力と成長を高め合います。試合後のコメントの「すばらしい相手に出会えました」「私が強くなれたのは、ライバルがいたおかげです」といった言葉は、相手へのリスペクトの現れです。当然相手もそのように思っていることでしょう。
肌の色や体つき、服装や立ち振る舞い、言葉遣いや生活習慣、価値観等々、自分とは異なる人間がいることを受け入れ、リスペクトの気持ちをもつこと。易しいようで、なかなか難しいこと。乗り越えるには、自分自身の心の狭さを取り除き、相手をリスペクトし、自分に誇りをもつことです。
本学の建学の精神は、これを「人間平等」「個性尊重」と表していますが、多様性や違いを認めるのは国際的なことだけではなく、身近なところから始めなければならないのです。そしてそれぞれの天賦の能力である個性を発揮し合って、人々の幸福、福祉の実現をめざす。本学は、前述の2つに加えて「和と感謝」をもって建学の精神としています。
人と人との関係だけでなく、国と国、地域と地域の関係も同様です。自国の伝統や文化、歴史等を理解して誇りをもち、自国とは異なる他国の風土や慣習、制度、伝統や文化、歴史、価値観等を理解して受け入れ、畏敬の念をもって共存、共生の道をともに歩む。これがなければ真の国際化は実現できません。
異質を受け入れ、含み含まれながらの共存、共生の考え方は、日本人が古くから大切にしてきた考え方です。競技終了後の選手同士のお互いを讃え合い、喜び、慰め合う姿を、共存、共生のシンボルとして、胸に刻んで歩んで行きましょう。(加藤明学長)
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次回は教育学部保健教育学科の川勝佐希講師のコラムです。お楽しみに。
[ かしこい子育て ]
掲載紙面(PDF):
2021年8月28日号(2429号)4面 (5,770,893byte)
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